私が麦わらの一味に入ってしばらくたつ。
この船はとても楽しくて、毎日とても充実している。ルフィやウソップ、チョッパーとの釣りも、ゾロとのお酒も、ナミやロビンとのお話も、全部楽しいけど、特に楽しみにしていること。それは…


「じゃーん、どう?イチゴのモンブラン!この前サンジに教えてもらったコツを取り入れたの」

「おお…!うまそうだよ。さすがだなおなまえちゃん」

「試食をどうぞ。評価をお願いします、サンジ先生」

「ああ。じゃあ、いただきます、おなまえパティシエール」


それは、サンジとのお菓子作りだ。
サンジはコックで、とても料理が上手。もちろん、お菓子作りも。あたしはこれでもパティシエールだ。ひととおりお菓子は作れるけど、さらに改良を重ねたい。だから、サンジに教わっているのだ。
この、二人でお菓子を作っている時間が一番好き。


「どう?サンジ」


イチゴのモンブランは、淡いピンクの紐のようなクリームがふんだんに乗っていて、見た目はとても美しく出来ている。サンジはそれを優しくフォークで切り分け、口に入れた。どきどきしながら評価を待つ。


「うん、うまい。また腕が上がったんじゃないかい?」

「やった!ありがと」


あたしも自分のモンブランを食べてみる。ほのかな酸味がほどよい甘さと絶妙にマッチしていて、とても美味しい。自分で作っていながらも、頬を抑えて目を細めた。


「んーっ、たまんない!」

「…おなまえちゃんは本当に幸せそうに食べるね」

「うん!幸せ。でも、自分が作ったものが人に喜んでもらえたらもっと幸せ」


フォークをくわえたままにっこりすると、サンジはそうか、と言って微笑み返した。ほんわかした空気。とても居心地が良い。


「あたしさー」


無意識的に、本音をこぼした。


「サンジとこうしてるの、好き」


サンジがぴしっと固まる。あたしは気にせず、モンブランを頬張った。
サンジがやっと動き出したかと思うと、そっぽを向いて手で顔を覆った。


「どうかした?」

「…いや…今のは、破壊力があったなと」

「破壊力?」


首を捻る。なんもしてないよ、あたし。サンジは小さく深呼吸をすると、あたしの目を見つめた。


「おれも好きだよ、プリンセス」

「ふふ、ありがと」


もう一口、とモンブランを口に入れながら微笑む。サンジは一呼吸置いて、口を開いた。


「…おれ、おなまえちゃんのこと、」

「あーーーっ!!なんかうまそうなの食ってるーっ!おなまえ、おれのは!?」


サンジの言葉を遮ってやってきたルフィ。あいかわらず賑やかだ。


「あるよ。でもあと一つしかないから、みんなには秘密だよ」

「おう!!ありがとう!!」


嬉しそうにモンブランに近寄るルフィ。しかし、その前にサンジがゆらりと立ちはだかった。


「お?サンジ?」

「…こんの…」

「…サンジ?」

「クソゴムーーッ!!」


サンジの蹴りがルフィを吹っ飛ばした。


「てめーなんぞにくれてやるおなまえちゃんのモンブランはねェェェ!!」


あたしはその様子をぽかんと眺めていたけど、まあいつものことなので、今はモンブランを食べ切ることに専念することにした。




あなたとスウィーツ

(なんで蹴られたんだおれ!?)
(自分で考えろクソゴム!)

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