いよいよ明日だ。朝食時、コアラとサンドイッチ片手にこそこそと会議を開く。


「コアラ、計画の方は?」
「順調だよ。すべて計画通りに」
「よし。じゃああとは、」
「キミにかかってるよ、おなまえ。わかってるよね?」
「…うん」


神妙な面持ちでごくりとつばをのむ。
はたから見れば、何か深刻なの作戦を企てているように見えるが、全く違う。なんの話をしているのかというと、ただのパーティーの計画の話だ。サボの誕生日パーティーの計画をしているのだ。
たかがパーティーの計画と思うかもしれないが、私にとっては重大な計画なのだ。なにしろ、明日のパーティーの最後に、彼に告白するのだから。


「覚悟はできてるの?当日になって怖気づいたりしないでよね?」
「わ、わかってるよ。…でも」
「でもじゃない!大丈夫、きっとうまくいくから!」
「〜〜〜……」


コアラは、私が彼を好きになった時に相談してからずっと応援してくれている。こうやって元気づけたり励ましたりしてくれるが、どうしても自信がもてない。彼が私を好きな確証はないし、もしふられたら仲のいい今の関係は崩れてしまう。
サンドイッチを租借しながら、つい黙ってしまう。


「プレゼントの準備はできてる?」


コアラがもぐもぐと食べながら聞いてくる。こくんと頷く。以前に島に上陸したときに買ったのだが、プレゼントを用意する時にもだいぶ迷ったし悩んだ。そしてなんとか買うまでにいたった。ラッピングを頼むときの私の真っ赤な顔を見た店員さんに笑われてしまったが。


「じゃああとは時を待つだけだよ!がんばって、おなまえ!」


コアラの笑顔が輝いている。顔が熱くなっているのを感じながら頷いた。


「おはよう!おなまえ、コアラ!なんの話してるんだ?」


びくっと肩が跳ねる。すぐさま振り向くと、サボがさわやかな笑顔でサンドイッチをもって隣に座った。どっくどっくといろんな意味で心臓が暴れる。同じく振り向いたコアラを見ると、タイミングの悪いやつめ、というようなじとりとした視線でサボを見ていた。


「サボ君には関係ない話!女の子の話に首突っ込んでくるなんてデリカシーないなあ!」
「え、なんだよ。教えてくれたっていいだろ!気になるじゃねえか!」
「あっちいってて!しっしっ!」


そんな言い方したら察されちゃうよ、と内心ひやひやだが、サボはあっさりと諦めてハックのところへ行った。その際に、ばちっと目が合ってしまった。慌ててそらす。ああもう、静かにしてよ私の心臓!





そして時はやってきた。サプライズパーティーは大成功を収めて、にぎやかな宴もそろそろ潮時だ。コアラが私の背中を押す。すーはー、深呼吸をしてから、覚悟を決めた。


「サボ、ちょっといい?」
「ん、ああ!どうかしたのか?」


ドラゴンさんと話していたサボの手をひいて、少し離れたところにくる。サボは少し紅潮した顔でにこにこと私に話しかけた。


「こんなパーティー開いてくれてありがとな、おなまえ!おなまえとコアラが主催なんだろ?本当うれしいよ」
「楽しんでくれてよかった。みんなからたくさんプレゼントもらってたね」
「おう!…でも、おなまえからのプレゼントはもらってねェなァ?」


いたずらっ子のように笑うサボ。どきりと胸が高鳴る。背中でプレゼントを持つ手に力をこめる。そしてゆっくりと差し出した。


「これ、私からのプレゼント。あげる」
「え!」


もうもらえないと思っていたのだろう。不意打ちでサボはぱちくりとしてから、私のプレゼントを受け取る。青の包装紙に青のリボンのラッピングされた箱をじっと見つめ、嬉しそうににっと笑った。


「……大切にする。ありがとう、おなまえ」
「うん。…あのさ、ずっと、言いたかったことがあるの」


声が震えないように、ぎゅっと目をつぶってこぶしを握り締めて、からからに乾いたくちを動かした。


「私、サボのこと……っ!」
「ストップ」


まさに今想いを伝えようとしたその口を、手でふさがれた。驚きで目を見開いてサボを見る。サボはちょっと待ってろと言ってその場を離れた。
ぽつんと残された私は青ざめて立ち尽くしていた。どういう状況なのだこれは。え、逃げられた?ごめんなさいって遠まわしに言われてる?いやむしろダイレクトすぎる。やっぱり言わなければよかった、と後悔しかけたそのとき、目の前に花束が差し出された。


「待たせて悪い。これとって来た」
「…こ、これは……?」
「遮ってごめんな。俺から言わせてくれ」


私の頭はとっくに思考回路を停止している。きれいな花束の匂いが鼻孔をくすぐり、とたんにぽろりと涙がこぼれた。


「好きだ、おなまえ」


サボははにかんで、泣き出した私の頭をくしゃくしゃと撫でた。いつのまにかまわりのみんなが注目していて、口笛や拍手が巻き起こった。ずるい、こんなの。サボはずるい。
ふと目に留まった花束についていたカードには、その花の名前と花言葉が書いてあった。見た途端いっそう顔が熱くなって、思わずサボの胸に顔をうずめた。






マーガレットに祝福を
(花言葉は、真実の愛)

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