10月31日ハロウィンの、夜6時。
待ち合わせ場所の、コルボ山のゴミ山。そろそろかなあとそわそわしていると、彼らは突然やってきた。


「トリックオアトリート!」
「お菓子くれねェと」
「イタズラするぞーーーっ!」


ずどん、と三人一気に頭上から落ちてきた。全く予期していなかった登場に、思いっきり叫んでしまった。


「ちょっとォ、もう暗いんだから驚かさないでよー!!」
「はは!大成功だな!」
「だから言ったろ、木の上がいいって!」
「エースの言ったとおりだ!おなまえすんげェ驚いてたな!あっはっは!」


頬を膨らませると、三人は笑いながらハイタッチをする。やられた。主犯らしきエースのみぞおちを箒でどすっと突いた。

イヌ耳に尻尾をつけた狼男のエース、黒いマントにキバをつけたドラキュラのサボ。そして、ちゃんと目だけは穴があいたシーツをかぶったルフィ。ルフィだけなんか異様だが、張り切って仮装してくるあたり、まだまだこどもだ。黒いワンピースに三角帽子、箒まで持っている私が言えたことではないが。
ちなみにこの箒は、さっきこのゴミ山で拾ったものだ。いい具合の大きさのものがあって嬉しい。


「よし、じゃあ行きますか!まずは第一ターゲットのところへ出発!」


箒を振り上げて宣言し、歩き出そうとすると、がしっと手を掴まれた。


「待てよ、おなまえ。行く前に…イタズラ希望なんだよな?」
「え?」


ニヤリとしたサボの笑み。嫌な予感しかしない。そういえば、トリックオアトリートと言われたのだった。しかし、今日はもらう側に回るつもりしかなかったので、用意がない。痛恨のミスだ。


「やれ、ルフィ!」
「おう!!おなまえ、かくごー!!」


ものすごい勢いで背中を押され、数メートル進んだとき、がくんと足場がなくなった。


「うわぁぁあ!」


急に浮遊感を感じて、どすんと落ちる。いてて、とお尻をさする。落とし穴だ。見上げると、3メートルほどもある大穴だった。エースが大笑いしている声がする。


「よっしゃァ!ひっかかった!」
「エース、笑いすぎだ…くくく…」
「サボも笑ってんだろ!ルフィ、苦労が報われたな!」
「あっひゃっひゃ!あァ、おれ、がんばったからなー!」


これを掘ったのはルフィらしい。末っ子にやらせたのか兄貴たちは。というか思いつくことがガキだ。いたずら三兄弟は手に負えない。
私は穴の中から叫んだ。


「ただのイタズラにどんだけ労力かけてんのよ!深すぎ!出れないー!もう、バカ三兄弟ー!」
「ルフィ張り切ってたからなァ」
「おれがんばったんだぞー!」
「まあ確かにおなまえにこれは深いな。ほら、手ェ伸ばせ!」


サボが穴から手を伸ばしてくる。それを掴むと、ぐいっと一気に引っ張られ、なんとか脱出することができた。


「もー、イタズラにも限度ってもんがあるでしょ…!」
「いやあ、ごめんごめん。ハロウィンだから許せよ、な?」


サボの屈託ない笑みで言われると、それ以上責められないのが馴染みの弱み。むうと唸ると、エースがぽんぽんと頭を撫でてきた。くそう。悔しい。私だって、と言い返した。


「サボたちはお菓子持ってんの?くれないなら私だってイタズラするよ!」


すると、ニンマリと三人が笑う。三人は揃ってズボンのポケットから、それぞれお菓子を取り出した。


「そうくると思って用意してたんだ!」
「イタズラはなしだな。おなまえ何してくるかわかんねェから怖いんだよな!」


ラッピングまで施してある、小さな型抜きクッキー。かぼちゃのオバケの形をしているそれは、オレンジ色だからきっとかぼちゃ味だ。予想外でぽかんとしていると、ルフィが楽しそうに笑った。


「しっしっし、これ、マキノに教えてもらって手作りしたんだぞー!」
「手作り!?ルフィたちが!?」


ありえない、こんな器用な真似できるわけないという気持ちを込めて叫ぶと、サボがぽりぽりと頬をかきながら、視線をそらした。


「つっても、だいたいマキノがしてくれたんだけどよ。おれたちじゃうまくできなくてさ。でも型抜きはちゃんとしたんだぞ」


するとルフィがシーツを揺らしながら笑った。


「エースもサボも不器用だからなァ!」
「ルフィなんか分量間違えただろうが!つまみ食いもしたし!」
「エースはボウル変形させただろ!」


エースとルフィが言い合いをする。容易く想像出来てくすりと笑った。マキノは大変だっただろう。それでもマキノのことだから、笑顔で許したに違いない。
そして、サボが三人分のクッキーをずいっと差し出した。


「まあ、味はマキノのお墨付きだ!食べてくれよな」
「…うん。ありがと」


ちょっと照れ臭くて俯きながら受け取ると、三人はにっと笑って、よし行くかと歩き出した。その後ろをついて行きながら、クッキーをまじまじと見る。一つラッピングを解いてぱくりと一口。やさしい甘さが口の中に広がり、ほのかなかぼちゃの味がする。


「な、おいしいだろ!?」


ルフィがにこにこと聞く。私はとびきりの笑顔で返した。


「うん、すごく!」


物欲しそうにしていたルフィと、おれ達があげたんだからいらねェと言っていたエースとサボにもクッキーを分けて皆で食べてから、四人でゴミ山を歩いて行った。

まずはマキノのところにお礼、またお菓子を募りに行って、それからダダンのところ。今日は確か、ガープさんもお菓子を用意してダダンの家に来るはず。今夜はお菓子パーティだね、と笑いながら、ハロウィンの夜をゆくのだ。






魔女とジャックオーランタン

お菓子を求めていざゆかん!

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