「よォ、おなまえちゃん」

「げっ!青キジっ!」


港町で青キジと遭遇してしまった!なんてことだ、あたしもここで終わりか!?…なんて、普通の海賊は思うんだろう。いや、あたしもそうだけど。
しかし、海軍の敵であるハズのあたしを前にしても、青キジはいつもなぜか捕まえない。どころか、馴れ馴れしく話しかけて接触してくる。てか、遭遇回数多い。本当なら、あたしもう死んでる。


「まあまあ、そんな怯えなさんな。せっかくなんだし、お茶でもどうよ?」

「あ、いいわね…ってアホか。あんた海軍大将、あたし海賊って分かってる?」

「そんぐれェ分かってるよ。ま、どうせおなまえちゃん暇だろ?」

「人を暇人みたいに言わないでくれる?」

「同じようなもんだろ」

「あんたこそ暇人ねェ」


はあ、とため息をひとつ。
肩をぐいっと抱かれて近くの店に入り、青キジとテラスの相席の席に座らされる。


「はあ、もう。あたしあんたに付き合うほど暇じゃない」

「そんなつれないこと言わないでよ。何か頼む?」

「…トロピカルジュース」

「はいよ」


仕方ないなあ。ジュース飲んだらすぐ出よう。海軍と海賊がお茶するなんて、こんなこと普通あり得ないんだから。まもなくして来たトロピカルジュースを一口飲み、青キジはアイスコーヒーをすすった。


「で。何の用ですか」

「冷たいねェ。こおりそうだ」

「あんたもうこおってるでしょ」

「違いねェ」


フン、と鼻で笑う青キジ。つまり、用という用はないってことか。暇つぶしかい。


「にしても、暑いわねこの島」

「夏島だからな。まあ、そんなに暑いとは思わねェが」

「そりゃそうでしょ。生身の人間は暑いの!」

「そうだろうな。汗出てるぞ」


額に汗がにじんでるのを指摘され、手の甲でぬぐった。こんなくそ暑い中、よくもまあ暑苦しい海軍のコートを羽織ってられるものだ。見てるだけで暑くなる。


「アイス食べたい」

「そんなに暑いかね」


スッと、青キジの手が伸びて来る。思わずビクッとすると、頬に冷たい手が触れた。


「な…!?」

「どうよ。冷たいだろ?」


いや、何がしたいのこいつ。まあ、でも…ひんやり冷たくて、すごく…


「…気持ち良い」


頬が緩むのを自覚しながら、青キジの手にあたしの手を添えて、頬にくっつける。こりゃいいわ、ヒエヒエ。人間冷房だよね。夏だけ欲しいな。冬はいらん。
すると、なぜか青キジはもう片方の手で顔を覆ってそむけた。


「…あのね、あんま無防備にするもんじゃないよ」

「は?」

「いや。つーか」


若干。若干だけど、青キジの顔が赤い気がする。


「あちィな。久しぶりに」


冷たい青キジの手の温度が、少し上がった気がした。




暑い日

(かわいーことしてくれちゃって)

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