「今日は多いな」
刀を振るいながら思わず漏らす。返り血が頬についた。
これだけ多いと、だいぶ苦戦するだろう。銀時や小太郎のほうは大丈夫だろうか。
ひととおり片付けてから、みんなを探すと、銀時がちょうど斬り終わったところで、駆け寄った。
「銀時、今日は多いな」
「ああ。大丈夫か?」
「私は大丈夫だ」
お互い、返り血のせいで大丈夫には見えないが。
「小太郎達は大丈夫だろうか」
「大丈夫だろ。まずは自分の心配しろよ?」
「ああ」
銀時が私の頬についていた血を汚れていない指で拭う。
____そのとき、銀時の背後を狙う天人がいて、刀を振り上げていた。銀時は気づかない。ぞくりとする。
「銀っ…」
「おらぁぁああああ!!」
間に合わないっ…!!私はとっさに前へ出る。刀を抜く暇もなく、両手を広げて立ちはだかった。
ザンッ!!
ぶしゅっ、と血が飛び出る。自分の血だなあとのんきに思っていると、自然と身体が動き天人を斬った。しかし天人と同時に私も倒れた。振り向いた銀時が叫んだ。
「おなまえッ!!!」
銀時が慌てて傷口に手を当てる。でも無駄だ、傷口がでかすぎる。
私は死ぬのか。わかるものだな、意外と。
頭の中は冷静で、あまり痛くは感じなかった。
「ぎ、んとき」
「おなまえッ、死ぬな!!ごめんっ…しっかりしろ!!」
ふっと笑って泣きそうな銀時の頬に手を添える。手に力が入らずに、震えた。
「死ぬなよ…銀時」
「やめろよ…こんなのって、なしだろ!!なぁ、こんなのって…!」
かなりの出血なのか、もう意識が朦朧としてきた。さらに視界もかすむ。
まだ、まだ、もう少し。もう少し待ってくれ、まだ、まだ伝えたいことが、たくさんあるんだ。
「ありがとう」
「…!」
「銀時のおかげだ、ぜんぶ。私みたいな奴でも、みんなと出会えた。…生きられた」
ごふ、と。血を吐いた。鉄の味が口に広がり、顔を歪ませる。銀時は苦しそうな顔をした。
「生きて、くれよおなまえ…」
私は私なんか死んだほうがマシだと思っていたんだ。こんな私にそう言ってくれる。
そんなお前が好きだったよ。
「好きなんだ…」
私もだ。だから、また会おう?今度に会うときまでに、可愛く笑えるようにしておくから。次は、こんな戦場じゃなくて、平和なところで笑いあおう。
「…おなまえ…!!」
「………またな」
死にたがりのピエロは恋をする
また、いつか。
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