泣いても泣いても、涙は底を知らないかのように溢れて、こぼれた。
「ううっ、うっう、ひっく、」
嗚咽を我慢することなく泣いていると、リヴァイ兵長が人差し指で私の涙をすくった。
「いい加減泣き止め」
「だって、」
だってみんなもういない。
ペトラも、オルオも、エルドも、グンタも。
もういない。
昨日まであんなに楽しく話していたのに、全員、死んでしまった。
必死にガスをふかして、飛び回って、削いでいたのに、女型には通用しなかった。奪ったはずの視力なのにぎょろりと向いたあの眼、捉えられないくらいの速さで空を切るあの手、そして目の前で殺されるペトラやオルオ、エルド。目に焼き付いて離れない。
私だけが生き残った。たまたま運がよかったとしか言いようがない。あと少しエレンが巨人化するのが遅ければ、私はここにはいなかった。
「私の力不足で」
「違う、お前のせいじゃねえ」
「でも、みんな死んだ、目の前で!」
兵長が気がおかしくなりそうな私の唇を塞ぐ。優しく離れて、言う。
「お前が生きてくれていて良かった」
ぼろぼろと止まらない涙を無理やり拭う兵長。痛い。
誰よりも兵長が辛いはずなのに、兵長が泣かないから。泣けないから。代わりに私が泣くんだ。涙は二人分だからこんなにも流れているんだ、こんなにも悲しいんだ。
「兵長は死なないでください」
私の口からでたのは、懇願、祈りにも似た、すがるような言葉だった。
「死なないで…いなくならないでください、これ以上…兵長までいなくなったら、私…っ」
「…死ぬかよ。この俺が」
「そう、ですよね…?」
「死なねえよ、俺は」
そう繰り返して、私をゆっくり抱きしめる。ぬくもりが愛しくて、ぎゅっとしがみついた。鼓動が聞こえて、ああ、兵長は生きてる、とやっと感じられた気がした。
「お前こそ、死ぬんじゃねえぞ。俺より先に死んだら許さねえ」
「、はい」
私は、あなたがいれば大丈夫。死ぬ気がしないんです、あなたの存在が、私を強くするんです。何回も食べられかけたけど、そのたびに兵長を思い出して。戦って来たんです。
この想いを伝えようと、か細い声で言う。
「大好きです、愛してます、兵長」
「…俺もだ。だから、死ぬな。生きろ。俺と生きろ」
「はい…っ」
この残酷な世界で、あなたとどこまででも抗って、戦い続ける。
たとえ、どれだけ犠牲を払っても。
最善の犠牲泣いても叫んでも喚いても、世界は残酷なのだから。
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レイラの初恋