真夏の太陽が人々の肌を焼き焦がさんとばかりに容赦無くじりじりと照りつける。
空を見上げれば夏を思わせるわたあめのような真っ白な入道雲が堂々と浮かんでおり、真っ青な空と海と綺麗なコントラストを成している。
今日はたしかこの夏一番の真夏日になると予報ではなっていたはず。確かに、今日は一段と暑い。こんな暑くて天気の良い日には、海は人でいっぱいだ。きらきらと光る海と水着姿で楽しそうにはしゃぐ人々を眺めながら、お盆を抱えて汗をぬぐった。
海の家にアルバイトに来たのはいいけれど、暑いのなんの。日焼け対策に、薄めの長袖パーカーを着ているからまた暑い。下はショートパンツだけど。日焼けどめもばっちり塗っているけど、果たして効果はあるのか。にしても、人の多いこと多いこと。こんなに多いんだったら、知り合いに会いそうだ。…と思っていたら、見覚えのありすぎる銀髪が見えた。


「お、おなまえ。こんなとこでなにしてんの、お前」
「おなまえも遊びに来たアルか?」
「こんにちは!」


会っちゃったよー!知り合いは知り合いでも一番めんどくさい奴らに会っちゃったよー!万事屋トリオが手を振りながら近づいて来る。私も手を振り返す。


「こんにちは、三人とも。私、海の家のバイトなの。三人は遊びに?」
「ちげーよ、仕事だ仕事。じゃねェとこんな人ごみの中来るわけねーだろ」
「じゃあその浮き輪とサーフィンボードは何」


海パン一丁にサーフィンボード。神楽ちゃんは既に浮き輪を装着完了しているし、遊ぶ気満々だろあんたら。仕事する気皆無だろ。


「せっかくだから遊び尽くしてやるネ。おなまえも一緒に遊ぶヨロシ」
「いやだからバイト」
「つかおなまえ水着じゃねーの?チッ」
「舌打ち聞こえたんだけど」
「まあまあ二人とも。おなまえさん仕事中なんですから、邪魔になっちゃいますよ」
「メガネは黙っとけ!」


新八くんが神に見えたのに、このあしらわれ方。かわいそうだ。…というか。上半身裸の銀さん、腹筋めっちゃある。胸板厚いし、たくましい…とてもマダオとは思えない…思わずじっと見てしまい、はっとして目を背ける。


「何?銀さんのパーフェクトボディに惚れちゃった?いいぜ抱きついて来ても」
「ご遠慮シマス」
「照ーれちゃってー」


ニヤニヤする銀さん。惚れてないし照れてないし!無視してすたすたと海の家へ戻ろうとする。すると、神楽ちゃんが服の袖を掴んでついて来た。


「おなまえ、かき氷食べたいアルー。金は新八が払うヨ」
「僕が払うの!?」
「わかった。何味?新八くんも」


神楽ちゃんはぱあっと顔を輝かせ、嬉しそうに即答する。


「イチゴ!」
「ハワイアンブルーとかもあるけどいいの?」
「そんなチャラチャラしたモンはいらないネ。かき氷は王道イチゴが一番アル」
「じゃあ僕はハワイアンブルーで」
「はァ?だァから新八はダメネ。仕方ないから私がそれも代わりに食べてやるアル」
「結局ハワイアンブルーも食べたかったんでしょ!!僕のはあげないからね!」


なんだかんだ言いながら、かき氷をあげると自分のを食べ始める。こんな暑い日に海で食べるかき氷は格別だろう。それを見た銀さんが私に言う。


「俺はイチゴね。練乳がけで」
「かき氷売り切れでーす」
「おいいい!嘘だろ!ぜってェ嘘だろ!そんな急に氷なくなるわけねェだろ!」
「練乳がけ?あるわけないでしょメニュー見てから言ってふざけんな」
「スイマセン!」


なんだかムカつくのでそう吐き捨てて、まあ仕方なく普通のイチゴ味かき氷を持って来ると、あー良かったなどと言いながら食べ始めた。私も食べたくなってきちゃったけど、お仕事中だ、我慢我慢。
神楽ちゃんがかき氷をすごい勢いで掻き込んでいる。絶対キーンってなるぞ。銀さんはシャクシャクとかき氷の山を崩して食べ進めている。口元を緩めてそれを見ていたが、自分の仕事を思い出し、お盆を抱え直す。


「じゃあ、私仕事があるから。またね」
「え、もう行くんですか?」
「うん」


思う存分楽しんで来てね、と言って戻ろうとすると、銀さんにがしっと腕をつかまれた。じっと私を見てくる。


「せっかく海に来たのに、楽しくなくね?」
「…遊びに来たんじゃないしね。まあ確かに、カップルの多さにうんざりするし、見せつけられる度に顔面にかき氷叩きつけてやろうかと思うし、リア充爆ぜろって思うけど」
「いやそこまで聞いてないけどね」
「意外と楽しいよ。海綺麗だし」


にっこりと笑うと、銀さんはふーんと頷いて、溶けかけた残りのかき氷を流し込む。腕は掴んだままだ。離してくれないのかなと思っていたら、ずんずんと海の家に連れて行かれる。何事かと思えば、店長さんに向かって、私の腕を掴んで挙げさせた。


「すいませーん、こいつ、今から休憩時間で」
「は!?ちょっと銀さん、」
「仕方ないねェ、なるべく早く戻っておいでよー」
「へーい」


呆気にとられる。いつのまにやら、あっという間に、私の休憩時間が確保された。ぽかんとしたままの私に、銀さんはにっと笑って、やっと腕を離した。


「俺らと一緒に遊んでくれねェ?三人じゃつまんねェしよ。神楽、女一人で物足りねェだろうし」


そんな言い方をして。神楽ちゃんと振八くんが砂浜で私に大きく手を振っている。おいでおいでと招いているようだ。一瞬、いいのかな、とためらったけれど、もう休憩時間をとっているんだし、今更迷うこともない。


「しょうがないなあ」


くすりと笑う。銀さんが私の手をするりと取る。暑さで汗ばむその手をぎゅっと握り、お盆を置いて、二人が待つ砂浜へ駆け出した。



真夏日に踊らされてんじゃないよ



企画あの雲食べたらうまそう様に提出。
ありがとうございました。

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