「たんじょーびおめでとーゴザイマス」


棒読みになりつつ、プレゼントを差し出す。と、すぐさま駄目だしが飛んで来た。


「駄目、心がこもってないっス!やり直し!」

「あーもーこれで何回目!?もーやだー!また子ー終わりにしてよー!」

「何言ってるっスか!ほらほら、テイク13!堅苦しいからもっと軽い感じで!笑顔を忘れずに!」


今日は晋助の誕生日。ということで、いつも無愛想でそっけない(また子談)あたしの晋助へのプレゼント渡しの練習をさせられている。
それを眺めて万斎がさっきからくすくす笑っている。腹立つ!
軽く、軽く…


「たんじょーびおめでと晋ちゃん☆テヘペロ!」


そう言って気持ち悪い笑顔を貼り付けてポーズを決めると、また子が青ざめた。


「きもっ!!なんスかそれきもっ!!きもっ!!」

「ぶふぉっ」

「三回言わないでくれる?だってまた子が軽めにって言ったでしょ!軽さを誠心誠意表現しました。てか万斎笑わない!」

「誠心誠意尽くす所が違うっス!」


くそ、どうすりゃいーんだよ!ばか!
そろそろイライラしてきた。


「なんでこんなことしなくちゃいけないわけ?また子がやればいいじゃん!」


プレゼントを押し付けようとすると、手で遮られた。また子は不服そうで、少しだけ悲しそうだった。


「そんなの…。私がやりたいんスけど…でも、晋助様は、おなまえからもらったほうが喜ぶっス。今日は、晋助様にめいっぱい喜んで欲しいんス」


だから、おなまえに渡して欲しいんス、と言ってあたしにプレゼントを押し返す。
晋助のこと、本当に好きなんだなあ…。あたしも、晋助に喜んで欲しい。あたしががんばれば、喜んでくれるのかな。


「さあ、テイク14っス。今度はもっと普通に、ナチュラルかわいく!」


すると、煙草の匂いが鼻をかすめて、まさかと思って振り向く。
晋助様のお出ましだった。


「ちょっ!まだ完成してないのに!…もうこうなったら仕方ないっス、さあ、行くがいいっス!」

「え、行くの!?」

「私は万斎先輩と見ておくっス!」

「また子ー!!」


晋助の前に押し出される。目があって、とっさにプレゼントを背中に隠した。


「…あ?どうした」

「あーっとお、あのー…」


えっと、思い出せ、また子監督のレッスンを!明るく、ハキハキと、軽めに、ナチュラルかわいく、…笑顔で。
心をこめて。


「誕生日、おめでとう!晋助っ」


にこっと笑って、プレゼントを差し出す。こ…これでいいかな。結構勢いで言ったけど。プレゼントを渡して、恥ずかしくなって俯く。


「…ありがとな」


そっけない返事だったけど、顔をあげると、いつもは見られないずいぶんと嬉しそうな表情をしていた。ああ、また子は正しかったと思いながら、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられていた。





心をこめて

(晋助様喜んでる!さすが私っス!)
(…おぬしはすごいでござるな)

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