間抜けな着信音が屋上に響く。
携帯を見れば、銀時、と点滅していた。正直今聞きたい声ではなかったので、あまり出たくはなかったけど。無視してもきっとしつこくかけてくるだろうから、ゆっくりと耳に当てた。
「もしもし」
「もしもし?俺だけど。今どこにいんの、見せたいモンがあってよ」
どうせ、しょうもないモノだろうことは今までの経験上、予想がつく。期待させておいて、がっかりさせるものばかり。今年作られたばかりのピカピカの五百円玉だったり、賞味期限がぞろ目のいちご牛乳だったり。果てしなくどうでもいいけど、銀時は嬉しそうに私に見せてくるのだ。
「自分の部屋」
「おっけ。今から来っから」
そう言って、ぶち、と来れた。電源ボタンを押して、携帯をしまう。
銀時は、何も疑うことなく私の家に向かうんだろう。ああ見えて純粋無垢、無邪気の塊なのだから。
…私の部屋の家具やら道具が全て引っくり返されているのを見て、どう思うのだろうか。
「はあ、」
私はもう疲れた。
お母さんの机に離婚届が置いてあるのを見た。もう、限界だと思った。お父さんから蹴られた腹が痛むけど、そんなのもうどうでもいい。
今の私の現状を銀時に打ち明けていれば、違う結末が待っていたのだろうか。
さあ、世界にお別れを。
この世に未練があるとすれば、銀時が持ってくるモノが何なのか、見れないことだ。
「バイバイ」
私は青い空に身を投げた。
世界崩壊、5秒前
(私が壊れるカウントダウン)
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