今日は副長の誕生日だそうだ。
知らなかった、今日は私遠出していたからみんなとあまり話していなかったし。今知ったよ。カレンダー見て。
そしてただいま、深夜11時57分。


「…やっべェェェェェ!」


あばばばば知らなかったじゃすまねェェェ!副長っ、副長はまだ起きてるか!?お祝いしないと!言葉だけでも!!
いつもお世話になっているのだから、誕生日くらいお礼とお祝いがしたかった。だから、日付が変わる前に…!!


「たのもーっ!」


スパァァンと襖を開け放つと、副長が恐ろしく不機嫌そうに書類から視線をあげた。


「てめェ今何時だと思ってやがる!!うっせえんだよ切腹させるぞ!!」

「副長の方がうるさいです」

「んだとコラ」


声をおとしてぎろりと睨まれる。ふと時計が目に入り、ぎょっとする。長針が今にも短針と重なりそうだったのだ。私は副長の隣にスライディングしながら座り、ぺこっと深く頭を下げた。


「お誕生日っ!おめでとうございます副長!」


カチ。

時計から、針が重なった音が聞こえた。ギリギリセーフ…!!ホッと息をついて顔をあげると、副長が不機嫌そうに私を見ていた。


「…遅えんだよ」

「す、すみません。でも、なんとか日付が変わるまでには間に合いましたよ…!」


慌てて言うと、副長はボソリとつぶやいた。


「…待ってたんだからな」

「……え、」

「どうせなら、書類手伝え。プレゼントがわりに」

「あ、はい」


はぐらかされた気がする。でも、私はこの耳でちゃんと聞き取った。副長の隣に座り直して、書類を手に取りながら、くすりと笑った。


「副長っ」

「…何笑ってんだよ」

「お誕生日、おめでとうございます」

「…おう」


少し遅れてしまったけれど。
ありがとな、と聞こえないくらいの音量のつぶやきが聞こえた。




スライディングバースデー

(ぐー…)
(…で、結局寝るのかよ)

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