「さて、何がいいのかなあ?」
地球のでぱーとって所に来てみた。たくさん物や人がいて、すごい。迷子になりそうだし、何買っていいのかさっぱり。阿伏兎がいて良かった。
「そうだなあ…まあ、ゆっくり見て行こうな」
「うん」
ジュースを買って、飲みながら陳列している店を眺める。すると、あるものを見つけた。
「阿伏兎、これ、いいんじゃない?」
「あ?」
手に取ったそれは、特大のパンダのぬいぐるみ。すごく可愛い。もふもふしていて、顔をうずめた。
「…そりゃ、可愛いけどよ」
「ね、可愛いでしょ?」
「そりゃお前さんが欲しいだけだろ」
「そ、そんなことない!団長のプレゼント選んでるのよ!」
「団長にそれあげんのかい?サンドバッグになって木っ端微塵になるのがオチだろ」
「…それもそうね」
顔を離すけど、名残惜しい。値段をちらりと見てみる。
「!はわわ」
ブランド物だった。到底手が届かない値段で、慌てて棚に戻し、なぜかパンダに頭を下げて阿伏兎の元へ戻った。
「さ、さあ行こっか!」
「…おもしろいな、嬢ちゃんは」
くっくっく、と喉を鳴らして笑われた。パンダとお別れして、また歩き出す。
「…ところで、嬢ちゃんよ」
「何?」
人ごみを避けながら、阿伏兎はあたしに問いかけた。
「お前さん、なんで団長が構って来るかとか、なんで団長が他の男といたら怒るか、分かるか?」
「わかんない」
即答。
「…だろうな」
呆れたように笑った阿伏兎。どういう意味なのか、阿伏兎の言ってることが理解出来ない。
「鈍感というか、天然というか…鈍いんだな、やっぱり」
「どういう意味?」
「いんや。…あ、ここなんかいいんじゃないか?プレゼント」
「え?どれ?」
「ここ、ここ」
阿伏兎が指差したのは、パワーストーン屋と書かれたお店。たくさんの宝石みたいな石が所狭しと並んでいた。吸い寄せられるように近づく。きらきらと輝き、まるで宝石箱の中に入ったよう。
「わ…!!すごい!たくさん宝石がある!」
「それぞれに効果とか意味がついてるから、イイと思うやつを選べばいい。お守りみたいに持ち歩く事も出来るし、飾ることも出来る。硬い石なら壊れにくいし、ぴったりなんじゃないか?」
「……阿伏兎すごい」
「だろ」
そんな発想、全然なかったよ。たくさんの石の中から、一つ一つじっくり見て、どれにするか決める。たくさんありすぎて選べない。効果の書かれた説明文を読みながら、時間をかけて選んだ。
「これにする!信頼と愛情のガーネットと、魔除けのオニキス!」
「これもいれとけ。セレナイト、月のパワーだってよ。夜兎にぴったりだろ?」
「うん!じゃあこのみっつにする!」
手のひらの上の石を見つめる。赤、黒、白とあまりにも違いすぎる色だけど、かっこいい。オシャレなフェルトの巾着袋に入れてもらい、お守りのような感じに。
「金、あるか?出してやろうか?」
「ううん、あたしがあげるプレゼントだからあたしが買いたいの」
お買い上げありがとうございました、と営業スマイルと共にラッピングされたそれを渡される。
ぎゅっと抱きしめた。
「こういうとこは素直なのに、なんで本人の前では素直になれんのかねえ」
「うう、それが悩みなのよね…」
「プレゼントあげるときくらいはちゃんと素直になれよ」
「が、頑張るっ」
「ツンツンもいいけどな、たまにはデレないと萌えないぞ」
「気持ち悪いよ阿伏兎」
「気持ち悪い言うなこのすっとこどっこい」
乱暴に頭を混ぜられた。
団長、喜んでくれるかなあ。喜んでくれたらいいな。
スキップしたい気持ちにかられながら、歩いてでぱーとを出た。
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