傘をくるくると回しながら、船首に飛び乗った。
「うーん、今日もいい天気」
大きく伸びをして、深呼吸してみる。今日は昼寝でもしようかな、と考えていると、あいつの声が聞こえて来た。
「おーい、おなまえ」
「げ、来た」
あいつ、というのも、我らが団長、神威なんだけど。
「げって何さ。遊ぼうよ、おなまえ」
「やだよっ。団長、遊びじゃないじゃん、本気なんだもん!命がいくつあっても足りない」
団長はなぜかいつもあたしにくっついてくる。遊ぼうよ、と誘って来ては命がけで遊んだり、昼寝しようよ、と誘って来ては膝枕させたり、どれも強制的に。それにうんざりしてるけど、どこか楽しんでるあたしもいる。
「おなまえなら大丈夫。今日は鬼ごっこ」
「やだってば!それに、今日は遊べないちゃんとした理由があるの!」
「理由?何?」
「それは…」
思わず口ごもる。
だって、今日は…団長にあげるプレゼントを阿伏兎と買いに行くから。特別な日でもなんでもないけど、ただあたしがあげたいだけ。
そう、あたしは、団長の事が、好き。なんだけど、あたしってやつはどうも、天邪鬼なようで。
「かっ、買い物いくの!」
「へえ、一人?俺も行くよ」
「駄目!来ちゃだめ!一緒に行く人いるから!」
「ふーん、誰と?」
「…あ、阿伏兎」
「…阿伏兎?何で?」
「な、何ででもいいでしょ!だから、来ないでよ!?」
そのままダッシュで逃げた。あーあ、またやっちゃった…何であんな言い方しちゃうんだろ。可愛くないなあ。怒るだろうなあ、あんな言い方。ぎゅっと目を瞑って阿伏兎の元へ向かった。
「阿伏兎ーっ!」
「あ?今日はまたどうした?」
「やっちゃったよー…」
はぁ、とため息をつく。
阿伏兎はあたしの気持ちを知っていて、良い協力者。今回のプレゼント大作戦も、何あげたらいいか分からないだろうから見繕うの手伝ってやるって言ってくれた。
「あのね、今日も団長が来たから買い物いくって断ったの。そしたら、誰と行くのって聞かれたから阿伏兎って言っちゃった」
「…俺がどうなってもいいのか?お前さんは」
「よくない。ごめんなさいいいいい」
阿伏兎は終わった…とでもいいたげに壁に寄りかかった。
なぜか、あたしが団長以外の男の人といるところを団長に見られると、団長は笑顔でそいつを殺人未遂するらしい。なぜかは知らないけど。
「俺死亡フラグ立ってるんだけど」
「ちゃ、ちゃんと後でフォローするからっ」
「はあ…もう、困った嬢ちゃんと団長なんだからなあ。行くぞ」
「ありがとう!」
なんだかんだ言って付き合ってくれるから、阿伏兎好き。恋愛感情じゃないけど。
そしてあたし達は、でぱーとに向かったのだった。
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