17、今日は心がぽかぽかしています
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最近はとても天気が良くて、


絶好の撮影日和です。







私は青葉城西高校に入学して、
中学と同じく写真部に入部した。



入学して1週間くらい経ったくらいに、友人の茜と一緒に写真部に入部届を出しに行こうと写真部の部室に向かったが、そこには誰もいなかった。部室の鍵は空いていたが、中はもぬけの空だった。設備は一応整っているのでここが写真部というのは間違いないようだ。


私達二人は職員室に向かい、写真部の顧問の先生に聞きに行った。





「ああ、写真部? 一応部員は7人程いるんだけど、ほとんど幽霊なのよねぇ……部員数は揃ってるから廃部にはなってないわよ」

「そうなんですか」

「あ、でも鍵が空いてましたけど?」

顧問の先生に聞いてみると「ああ」と思い渡る節があるのか答えてくれた。



「きっと千堂(せんどう)だよ、写真部の2年なんだけど千堂はたまに部室に行ってるみたいで、部室の合鍵も持ってるから」

「先輩、ですか?」

「あ、入部届は私が預かるよ。あとコレ部室の合鍵ね、どっちかが持っててね」

「あ、はい」


私は顧問の先生から部室の鍵を預かり、職員室を出た。






「相変わらず写真部って人数少ないのね」

部室に向かう途中、茜が不貞腐れたように言った。





「でも廃部になっていないだけいいよ」

「……まぁそうだけど」

「そういえば、千堂先輩ってどんな人だろうね? 茜はどんな人だと思う?」

「個人的には委員長タイプで眼鏡で美少女希望」

「それは、まるで絵に描いたような文学少女だね」

「そ、そして撮りたい。上から下まで舐め回すように撮りまくりたい」

「そっちですか」


流石写真部の元部長だなぁと
写真部の部室を開けた。






「あれ、誰も居ない?」

「それにしてもこの部室、埃っぽいね」

「ねぇ、葵」

「うん、茜」





「「掃除しよう」」




二人の意見が合い、制服の白いジャケット脱いで、私は長い髪を高く結った。カーテンを開けて部室の窓を全部開けると新鮮な空気が入ってきた。




「うっわ、ねえ見てよ葵、凄い量の写真集」

「これって私物かな? あんまり埃っぽくないし日に焼けてないね」

「かもね、掃除終わったら見てみよっか」


茜の提案に頷いて、再び掃除を進めた。そんなに広くない部室だったが部屋の面積に比例しないくらい、やけに物が多かった。それは机や本棚にある写真集だったり、誰かの物であろう文庫本やジャンプが積み上がっていた。





そして約2時間後には、写真部の部室は見違えるように綺麗になった。





「お、終わった」

「お疲れ、茜……今日は帰ろうか」

「そう、ね」


初日の部活動は部室の掃除に疲れてしまい何も部活らしい事が出来なかった、とりあえず今日は掃除だけで終わり、私達は部室の鍵を閉めて帰る事にした。





そのまま喋りながら生徒玄関に向かうと、見知った顔を見つけた。





「葵?」

「あ、岩泉君」


バレー部のジャージを着ている岩泉くんと出会ってしまった。どうしてまたこのタイミングで、どうしようまた顔を背けしまいそうだ。でもそんな事したらまた岩泉君を傷つけるかもしれないし。




「葵も今帰りか?」

「うん」

「あ、ちょうど良いじゃん。岩泉、葵を送ってあげてくれない? 外はもう暗いしさ」

「おう」

「え!茜、一緒に帰ってくれるんじゃ?」

「え?私バスだし」


私と一緒に帰るとばかり思っていた茜は「学校の前にあるバス停でバスを待つから」と、言った。




「じゃあ頼んだよ岩泉、またね葵」

「ま、またね……」

「おう、じゃあ帰るか」


必然的に岩泉君の隣を歩いて一緒に帰る事になった。

あれ?そういえば岩泉君一人?





「岩泉君、徹は一緒じゃないの?」

「あー、アイツなら女の子に誘われて先に帰ったぞ」

「……ああ」


なんだ、いつもの事か。




「女の子と一緒に帰るの岩ちゃん羨ましい? とかニヤけ顔で言ってきやがったあの野郎」

「また徹は、余計な一言を」



あれ?女の子と一緒に帰るって




「でも岩泉君も私と一緒に帰ってるから同じじゃない?」

「ん?」



しまった!また変な事を言ってしまったかも、そうだよね……ファンの女の子と私を一緒の女の子として見たらおかしいよね。そもそも私は女の子として見られてないかもしれない!






「そうだな」

「え?」

「そうだ俺今、葵と一緒に帰ってんだな。なら、アイツと同じだ」

ニシシ、と岩泉君は笑った。






「俺さ」

「え?」

「葵とまたこうやって話せてすっげぇ嬉しい」

「!?」

「もう避けんなよ? 傷付くからなーアレ」

「わ、わかった……あの、ごめんね」

「もう気にしてねぇよ、でもなんかあったら俺に相談しろよ」

「?」

「前にさ、俺に頼れって言っただろ」

「う、うん」

「葵にだったらいつでも頼られてェっていうか、昔みたいに助けたいし守りたい」

「……うん」






私はこんなに、岩泉君に甘えてもいいのだろうか。


彼を傷付けてしまったのに。

もう一度、前みたいに戻れるんだろうか?










「岩泉君」

「んー?」

「私、岩泉君と仲良くしたい」

「!」

「あの、避けたりしてごめん、私やっぱり岩泉君と一緒にいたい、前みたいに仲良く出来るかな」

「……。」

「(う、沈黙が痛い」

「馬鹿じゃねーの」

「(あうっ)」


馬鹿と言われてしまいました!



「前みたいにって何だよ、俺ら前と変わらず仲良しだろーが、それはこれから先も変わらねーよ」

「!?」




これから先も、ずっと。


私は馬鹿だ。
岩泉君の事を考えると胸が苦しくて辛かったけど、離れ離れになる方がずっとずっと辛いって


どうして分からなかったんだろう。







「岩泉君、これからも……よろしくね」

「おう、超よろしくされてやる」

「えっと、岩ちゃんて呼んだ方がいい?」

「それはヤメロ」

「ふふ」


心は落ち着かないし、どうして痛くなるのか理由は分からなかったけど、こうやって笑い合って話していると


心が少しぽかぽかした。











「また今度、バレー部見に行くね」

「おう」

「徹じゃなくて岩泉君を応援するね」

「拗ねると面倒だからアイツも応援してやれ」

「ああ、拗ねるね、徹は」

「葵、」

「ん?」

「もうどこにも行くな、俺から離れるなよ、お前も及川もまとめて俺が面倒見てやるよ」

「……うん」



ごめんね。
ごめんね。

いっぱい傷付けてごめん。


私の手を引いてくれてありがとう。
私から離れないでくれてありがとう。








(ずっと仲良しの幼馴染でいさせて下さい)



今日は心がぽかぽかしています


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