6


息が出来ない苦しみからどうにか逃れようと体を捩る遥を、男は首を締めた状態のまま四つん這いにさせ、尻だけ高く上げさせる。
呼吸ができず顔を真っ赤にさせて、涙や汗で顔をぐしゃぐしゃにして、口の端から涎を垂らす遥に男は言い知れぬ優越感を感じた。

同時に激しい情欲を感じ、その色欲のままに遥の尻に怒張を捻じ込んだ。

「……ぐぅぅぅ〜〜〜っ!!……っく、くふぅ!」
「あ゙〜……。締まる……っ」

貫かれる痛みに激しく暴れる遥を、その首をぎりぎりと締め上げる事で黙らせ、男は少年を組み伏せ、犯す征服感と快感に酔いしれる。

それでも逃れようと、腰を振る遥の白く滑らかな尻を思い切り叩くと、びくりと遥の体が竦み、中がきゅっと締まった。
白い肌がみるみるうちに薄く色づいていくのを見て、男の征服欲はさらに満たされる。

更なる快感を得ようと、男は遥の呼吸を奪っていたネクタイを放り出して、その細い腰を鷲掴む。
バチュンッ!と勢いよく派手な水音を立てて最奥まで貫いた。

「ぐっ、けほ、……〜〜〜っ!!ぅ……っ!!」

乱暴な挿入に遥のそこは裂け、溢れた血液が震える太腿を伝う。
穴が裂けた痛みと、男に犯されるショックに、遥の瞳からはぽろぽろと涙が零れた。

そんな遥の心情などお構いなしで、色欲に囚われた男はがつがつと抽挿を繰り返す。
遥の血液と男の我慢汁で、結合部からはぬちっぬちっと粘ついた水音が響く。
薄汚れたトイレの壁や天井に響く水音と、遥の悲鳴とも嬌声ともつかない声に男の興奮は更に高まる。

「い゙あっ!あ゙、あ゙っ!んぅ!……っひぅ!」
「……っはぁ、ふぉっ!……おっ!おぉう、……っんおっ!」

ラストスパートを掛けて、男は気味の悪い喘ぎ声を上げ、がむしゃらに腰を振りたくる。
男が腰を振る度に、男の腹が遥の尻にバツンバツンとぶつかり、玉袋が遥のそれをびたんびたんと叩き、怒張が肉壁を捲り、抉った。
極たまにカリ首が前立腺を掠め痺れるような快感が走ったが、後ろの経験もなく、乱暴な挿入をされたのであっては到底痛みの方が勝る。

遥は朦朧とした意識の中で、早くこの嵐が過ぎ去ることをただ願った。

その願いが聞き届けられたのか、男は遥の腰を掴む手にぎりりと力を込めて、勢い良く突き上げ腰を尻に密着させると「うお……っ!」と呻きながら射精した。
遥の背中に抱きつくように覆いかぶさり、最後の一滴まで絞りだすように腰を動かし、ぐいぐいと押し付けてくる男に遥は吐き気がするほどの嫌悪感を感じたが、押しのける気力もなかった。

「……ひっく、……うぅっ……。」
「ふぅ……中々良かったよ。」

嗚咽を漏らして泣きじゃくる遥の上から退くと、男はさっさと身なりを調え始めた。
酷い喪失感と倦怠感に涙を流し、呆然とトイレの天井を見つめていた遥の耳に突然フラッシュの光と、チープな機械音が聞こえた。

「……え?」

重たい体に鞭打ち、首だけゆっくりと動かして振り向いた遥の目に、携帯をこちらに向け、ニタニタと厭らしい笑みを浮かべる男の姿が映った。
あまりの出来事に頭が真っ白になり、思考がショートしている遥に構わず男は撮り続ける。
赤く腫れ上がり、先程注がれた男の精液と裂けた傷口からでた血液が混ざり合った、薄桃色の液体を垂れ流す穴を。
泣きはらしたせいで涙と汗でぐしゃぐしゃになった顔を。
男に暴行され傷だらけになった遥の全身を。

連続して鳴り続けるシャッター音に、ようやく遥が我に返った頃を見計らって男は言った。

「携帯だせ。今の写真、ばら撒かれたくなかったら言うこと聞いたほうがいいんじゃないか?」
「……ぁ、」

男の嫌な笑みに、遥は全身の痛みも忘れてポケットから携帯を出し男に差し出していた。
遥の手から携帯を毟るように奪い取ると、ポチポチと操作する。
その様子を不安に満ちた表情で見つめていると、男の携帯が鳴った。

「ほらよ。」
「……つっ!」

男の声と共に遥の肩に携帯が投げつけられた。
痛みに眉を顰める遥に、「携帯鳴ったら出ろよ。それと……朝は必ずあの電車に乗れ、明日もだ。」そう言い遺して男は去っていった。

「っぐ、……お゙ぇぇ……ぅ、っおぇ……。」

男の言葉の意味を理解すると、酷い吐き気に襲われた。
力を振り絞って便器に顔を寄せ、胃の中の物を全部吐き出した。

「……っはぁ、なんで……。」

どうして自分がこんな目に。
情けない。恥ずかしい。惨めだ……。

遥は胸のむかつきに耐え切れず、また嘔吐くが胃の中は既に空っぽで、出るものは胃液ぐらいしかなかった。
口内には胃液の苦味が広がり、心の中に虚しさが広がった。

とりあえず今日は学校を休もう……。

なんとかトイレットペーパーと水道水で穢れを落とし、帰りの電車に乗り込んだ遥はふと、浅見の笑顔を思い出した。

『何か困った事があったら、いつでもおいで。』

言えるわけがない、言えるわけがない……。

明日からも続くであろう悪夢を思いながら、朝とは打って変わってゆったりとした少し気だるい雰囲気を保つ電車に揺られた。


fin.


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