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気が付けば高校生になってしまっていた私は、体に馴染まぬ真新しい制服を身に纏い電車に揺られていた
教室につけば新生活に沸き立つ同級生はとにかく騒がしい
イヤホンで耳をふさぎ外をずっと眺めているだけの私を、周りの数人が様子見をするかのようにチラチラと見ているのも鬱陶しく、早くこの場から居なくなりたいと切に思った
だが騒がしい中で群を抜いて更に騒がしい奴が私の前の席に座り、徐にイヤホンを片方掴み奪い

『なんだよ、なんにも聴いてねぇじゃん』

耳に当ててはぼやく
そして私に 俺は清田信長だよろしくな と手を出してきたので、その手を握ること無くイヤホンを奪い取り、何事も無かったかのようにイヤホンを耳に入れ込んだ
未だ目の前で取られることのない宙に浮く手を無視して外を眺めると、その様子を見ていた周りがざわめきだし、清田君大丈夫?なんて女子特有の甘だるい声が実に気持ち悪い
そんな雑音をかき消そうと爆音で適当に流した
曲は初めて聴いたし、見たこともないバンドの物だったが、今はその聞きなれぬメロディーが心地よかった



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