体育館横の裏庭は普段から人気は無かったけれども、日が落ちようとしている今現在では人1人の気配さえ無い
部活中の牧を呼び出したはいいのだが、一向にどう話を切り出したらと悩んでしまう辺りまだ自分の中で決断が出来ていなかったらしい
でも牧はそんな私を急かす事もせずに静かにその場に居てくれた

「ゆう兄が楽しそうに話してたの」

何度か深呼吸をした後に発した声は震えていた
でも今ここで逃げてしまえば私がここに居る意味が無い

「初めて本気で戦える奴と出会ったって
そして、一緒のチームでプレイをしてみたいと」

今でも鮮明に思い出すゆう兄の笑顔が微かにボヤける
泣くな
泣いたって何にもならない

「だから必死に勉強頑張って海南に行くんだって」

そしたらそいつと一緒にバスケが出来る というゆう兄の思いをちゃんとその人に伝える為に私は海南へ来たんだから

「これを受け取って欲しいの」

牧に差し出したのは彼が拾ってくれたリストバンド
このリストバンドはゆう兄がバスケをする時にいつも付けていたもので、死んでしまったあと私がずっと大事に持っていた

「ゆう兄と一緒にバスケをして欲しい」

牧紳一 あんたがその人だから



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