俺は何を名字の口から聞こうが彼女の傍に居ようと思った
この数日の間に名字が今どの様な立場に居るのかを知ってしまったから
常に1人で行動をし人との接触を避けている
清田が一緒に居る時もよく見かけたがどうやら相手にしていない様子で、拾ったリストバンドを返しに教室へ行った時に聞こえた名字に投げられる言葉は決していいとは言えないものだった
自ら孤立しているのは梵と関係があるのだろう
「本当に馬鹿だったんだ」
ハッと鼻で笑う名字が俺の目には強がって見えた
「あんなの冗談に決まってるじゃん」
真に受けるなんて と呆れる名字の手を掴む
『お前はそんな冗談なんて言えないだろ』
「アンタに私の何が分かんの!?」
名字の事はよく分からないが、これだけは分かる
『リストバンドを俺に渡すためだけに海南へ来たお前がそんな冗談言えるわけないだろ』
誰よりも梵の思いを大切にしている名字が、梵を死なせたのは自分だなんて冗談を言えるわけがないんだ
「冗談で済ませてくれたら良いじゃない」
悪い冗談だなって笑うなり怒るなりして、腫れ物に触れたくないと思ってくれたら良いじゃない
そんな事を苦しそうに言う名字は押しつぶされそうなのではなく、もう既に押しつぶされていた
『俺は名字を全国へ連れていく手助けをしなきゃいけないんだ』
梵が俺に口癖のように言っていたこと
それを俺は叶えたやりたいと思っているのに、手から滑り落ちたボールが弾む音がする
痛む頬が名字に平手打ちをされた事をじわじわと実感させた
「私を全国へなんて連れて行こうとしたから死んだのよ」
二度と私を全国へ連れていくなんて言わないで と涙を流した
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