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手を繋いで名前ちゃんを家まで送る
その途中にある公園に少しだけ寄らないかと誘い、入口近くのベンチに名前ちゃんを座らせた
少しだけ居心地悪そうにする名前ちゃんに気付かぬふりをするつもりだったけど、俺たちの関係をちゃんと確認する為には必要な事だと心を少しだけ鬼にする

『流川と付き合ってるんでしょ?』

試合の日、俺は流川と名前ちゃんがこの公園のこのベンチで抱き合っているのを目撃した

『内緒で会いに来たってことはそういう事だと思って』

名前ちゃんが俺の事を好きだと言ってくれたのは嬉しい
嬉しいけれど卑怯な事を俺はしたくないし、名前ちゃんにもして欲しくない
これ以上流川を裏切る行為は絶対に駄目だ
真っ直ぐ名前ちゃんを見つめると、顔を赤くして

「楓とは付き合ってないよ」

目を逸らした
だから試合の日に見てしまった事を名前ちゃんに伝えると、驚き、だから彰君は私の前から消えちゃったんだね と悲しんだ

「確かに楓には陵南との試合に勝ったら付き合えって言われた」

でも本当に付き合って居ないのだとあの日に名前ちゃんと流川の間に起こった事をゆっくり話す声が止まり、伏せ目がちだった目がギュッと瞑られ

「私は彰君が好きなんだってその時に気がついたの」

赤かった顔が更に赤くなった

「彰君はいつだって私の事を1番に真剣に考えてくれてる」

そんな事を楓に告白されて気がついた馬鹿な私が彰君を好きになって良いのか正直戸惑った と続ける名前ちゃんの目の前で携帯を出して電話をかけた
やはり携帯から聞こえたのは無機質な女性の声

『戸惑ったから着信拒否?』
「え?着信拒否??」

名前ちゃんは慌てて自分の携帯を確認するとわなわなと震え始める
そしてもう一度名前ちゃんに電話をかけるとコール音と共に名前ちゃんの手の中の携帯が光る

「楓が設定してたみたい…ごめんね」

深いため息と同時に いじられたのアドレスだけだと思ってた と漏らす名前ちゃんの頭を安堵しつつよしよしと撫で

『俺も逃げずに直接聞けばよかったんだよ』

怖かったから
流石に流川と抱き合ってる名前ちゃんを見たあとに聞くのは怖かった
はっきりと名前ちゃんの口から 楓が好きだから と聞くのが怖くて逃げた

『勇気をだして会いに来てくれてありがとう』

そんな勝手に逃げた相手に会いに来るのはどれだけの勇気が必要だっただろうか
目の前の小さな体を抱きしめると わっわっ とバタつく名前ちゃん

「心臓とまる…」

好きって恥ずかしすぎ と耳まで真っ赤な顔を両手で隠すのが可愛すぎて意地悪したくなっちゃうじゃないか

『キスした仲なのに?』
「それは!!!」

言わないでとでも言いたげな口を塞いだら

「いつもの彰君じゃない!」

君に嫌われてしまうだろうか



(でも好き とまた耳まで真っ赤な顔を両手で隠す名前ちゃんを抱きしめた)



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