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部活をする彰君を待っている間に、陵南まで原付を取りに来て欲しいと洋平に電話するとめちゃくちゃ嫌味を言われたけれど
(言われてもしょうがないなと反省して居るので何も言わずに聞いてあげた)
丁度部活終わりの彰君を待っている間に、洋平の代わりに三バカが来たので鍵を渡して無事に原付を回収して貰った
(陵南!仙道!とうるさかったが3日間のジュース奢りという条件で早々に帰宅いただいた)

『おまたせ』

ジャージを身にまといスポーツバッグを背負う彰君は、帰ろうか と迷うこと無く私の家の方へ歩き出した
だから私は慌てて彰君の袖を掴み制止させる
部活で疲れている人に突然来た人を送らせる訳にはいかないと思ってだ
それなのに彰君は、

『あーごめん、俺と一緒に居る所なんて見られたら大変だよね』

と謝るではないか
別に誰かに見られたところで困るようなことはない
(からかってくるであろう三バカには既に彰君と一緒なのは知られているし)

「どういう意味?」

よく分からない彰君の言葉に彼の袖を再度掴むと

『流川に見られたら大変だから』

そっと袖を掴む手を放すように私の手に触れた
彰君には私が恐れていた変化は無かった訳だが、こういった行動や言葉1つ1つがたまに他人行儀みたいで違和感しかない

「やっぱり私となんて会いたくなかったよね」

ボソリと出てしまった本音
うちの高校のバスケ部に全国への道を閉ざされたんだし
私と関わったらその事を思い出しちゃうから連絡だってしてこなかった訳だし
それなのに私ったら彰君の気持ちも考えずに会いに来てしまった

『俺は名前ちゃんに会いたかったよ』

彰君は優しいからそう言ってくれているだけ
流石の私でも嘘だって分かっちゃう

「大丈夫だよ気を使わなくて」

あはは なんて笑ってみたけど上手に笑えてる気はしない
だって彰君の顔が困ってる
そんな彰君の顔なんて見たくないから、用事を思い出したなんて超バレバレの嘘をついて、もう二度と彰君の前には現れないという意を込めてバイバイと手を振った

『名前ちゃんはなんで俺に会いに来たの?』

だけど彰君が私の手を掴んだから動けなかった
なんでって彰君に会いたかったから
他に理由なんてない

『流川を好きなはずなのになんで俺に会いに来たの?』

なんで私が楓を好きだなんて言うの?
私が好きなのは、

『俺は期待しゃうよ』

名前ちゃんが流川じゃなくて俺を見てくれるんじゃないかって
唇に触れた柔らかな感触
それが彰君のものだと分かるまで時間はかからなかった
離れようとするその唇が離れてしまわないように必死に手を伸ばしてしがみついた
それでも少しだけ離れてしまった唇で

「好き」

私は彰君が好きだと伝えれば目を細めて見たことも無い程の優しい顔で笑うから、もう一度好きだと言おうと思ったのにそれは彰君に飲み込まれてしまった



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