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簡潔に言えば勝った
それはつまりイコール仙道に勝ったということだ
そして俺が名前を手に入れたということだ
バスケ部員達と解散し、まず最初に名前に電話した
アイツの家の近くにある公園へ呼び出す為に
時間も時間と言う事で最初は渋られたが、今はノーと言っても無駄だと分かったのか少しだけ濡れた髪で現れた名前に 風邪ひく と言うと 楓のせいじゃん と笑った

[勝った]
「うん、知ってる」

おめでとう と笑う顔はさっきとは少しだけ違うぎこちないもので、分かんねぇけどイラついた
だから名前が手にしていた携帯を奪って、彰君と表示されていた番号を拒否設定する
そしてアドレスの配列に11を付け加え、仙道から届いていたメールを削除する
多くは無かったが、少なくもなかった仙道からのメールにさらにイラいた所で奪い返された携帯

「勝手にメール消さないでよ!」

フォルダを確認して 最悪 と怒る名前を無視して入口近くのベンチへ進むと、怒りながらも律儀に後ろを着いてくる名前が面白かった
ベンチに座り横に座る名前を見つめていると、名前は今日の試合の事をぺちゃくちゃと話し始めた
でも名前の口から直ぐに出てきた 彰君 という言葉に溢れ出す怒りを隠すことなく名前を抱きしめたら、ひゅっ息を飲む音が静かな公園に響いた気がした
随分と長い間抱きしめていたと思う
名前を確かめるかの様に、強く長く、何処へにも行ってしまわないように

[お前は俺のだ]

驚き見上げられた顔に近づくと見開かれた目がそらされることなく、名前だけ時が止まってしまったと思ってしまうほどに動かない
それなのに見開かれた目から溢れた涙は留まることなく頬を伝って流れ続ける

[そんなにアイツが良いのかよ]

コイツの中に居るのが俺でない事くらい俺にだってすぐ分かった
でも俺の知っている名前だったら、自分の事なのにそんな事にも気が付かずに、試合に勝ったら付き合えと言ったら 別にいいよ なんて馬鹿みたいに笑って俺を受け入れていたはずじゃないか
それなのに今はどうだ
動揺が隠しきれていない
全てアイツのせいだ
仙道彰が名前に近づいたせいで名前はおかしくなった

[いらねぇ]

泣く名前の体を突き飛ばしてベンチから離れた
おかしくなった名前なんていらねぇ
仙道が好きな名前なんて…俺は好きじゃねぇ
好きじゃねぇんだ



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