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会場に向かう途中で楓に会った
飲み物を片手にしている事から自販機にでも行っていたのだろう
なんでここに居るんだと言いたげな表情で近づく楓に手を振るとその手を掴まれた

「彰君に会いに行ってた」

誤魔化したり嘘をついたってしょうが無い
会った瞬間に私がどこに行ってたかなんて楓にはバレているんだから

[なんでお前が仙道に会いに行くんだよ]

ここ最近は楓は口を開けば彰君の事ばっかり言っている
友達に会いに行くのはそんなにおかしい事なのか

[お前、仙道が好きなのか?]
「えっ」

まさかのまさか楓にまで彰君が好きだとかの類を聞かれるとは思ってもみなかった
バスケ馬鹿で他人になんて興味無い楓は、敵である彰君と関わるなとは言ってもそんな事は言わないと思ってた

「私は友達だと思ってる」
[私はって事は仙道の野郎はそうじゃないって事か]

突然掴まれた手を引っ張られて楓に抱きしめられる
足元にはさっきまで楓が手にしていたスポドリの缶が音を立てて転がり、床は少しだけスポドリで濡れていた

[俺は仙道をぶっ潰して全国に行く]

前回の練習試合では最後の最後、彰君によって湘北は負かされたと晴子から聞いた事を思い出す
彰君がバスケをしている姿を見たことは無いので、彰君がどれほどの選手なのか計り知れないのだけれど、楓なら、今の湘北なら、彰君が居る陵南に勝って全国に行く事だって夢ではないだろう

[そしてお前を手に入れる]

今日の試合に勝ったら俺と付き合え という楓の言葉に抱きしめられた体が硬直して変な汗が出た
抵抗をして楓の腕の中から抜け出す
楓が嫌いな訳では無い
むしろ楓は無愛想で冷たい所もあるけれど、なんやかんや構ってくれるし優しい所だって沢山ある

「私は楓を友達だと思ってる」
[関係ない]

私に拒否権さえ与えない楓に違和感を抱いてしまった
そんな中で頭に浮かんだ彰君の柔らかな笑顔
同じ状況の中であるが故に、比べたくないのにそこが楓と彰君の違いなんだとハッキリと分かってしまう

[絶対に仙道の野郎には渡さない]

楓の私への思いは執着だ
再度抱きしめられた体には力が入らない
楓に抱きしめられただただ思い出すのは、彰君の優しい腕の中の心地だった



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