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好きだと言った時に付き合ってと言っていれば名前ちゃんを簡単に自分のものにすることが出来た
でもそれをしなかったのは自分のエゴで、これから名前ちゃんが俺の事を好きになってくれる保証も無いくせに、もっと俺の事を知った上での好きという言葉を彼女の口から聞きたいと思ってしまった
でも正直、決勝リーグでの海南との試合の時に名前ちゃんの姿が何処にも無かった事から、選択を誤ってしまったのではないかと不安になっていた
すぐにでも会いに行ってしまいたいのは山々なのだが、流石に決勝リーグ中の今はバスケに専念せざるを得ない
全国がかかった今、うつつを抜かしては居られないのだ

不安を抱きつつ迎えた湘北との試合の日
流石に名前ちゃんも来ているだろうと少しだけソワソワしてしまうのを隠し、控え室で試合の時間まで待機をしていると、ドアをコンコンとノックする音と共に

「彰君居ますかー?」

と開けられた扉の隙間から名前ちゃんの顔がひょこりと覗いた
キョロキョロとする名前ちゃんは俺の姿を見つけるなり、彰君みっけ! と満面の笑みを向けてくれた
慌てて近づくと他の部員達の視線が痛い程此方に集中している事は分かってはいたのだけれど

「海南との試合、応援出来なくてごめんね」

自分の中でモヤついていた物の話題が出た事でそれ所では無くなってしまうくらいには余裕がなかった

「ずっと考えてたの
次に会った時、彰君が彰君じゃなくなってたらどうしようって」

そしたら彰君に会うのが怖くなっちゃって と少しだけ口を尖らせて言う名前ちゃんは、俺の変化へ敏感な事を思い出した
(ついこの間も同じような事を言っていたし)

『大丈夫、俺は変わらないよ』

ポンポンと頭を撫でると目を細めて笑う名前ちゃんは安心したようで

「今日の試合応援するね!」

いつもの元気な名前ちゃんに戻ってて

「でも湘北も応援したいな…
私はどっちにも勝って欲しい」

だからなんかこう同点でずーっと試合の決着つかなかったら、オマケで両方行けるとか無いのかな? と真剣に腕を組んで悩んでるのがおかしかった
声を出して笑う俺に、なになに?なんか面白いことあった? とキラキラした目で聞いてくるから

『ねぇ、抱きしめてもいいかな?』

俺の言葉に迷うこと無く 別にいいよ と言わんばかりに両手を広げる名前ちゃんを抱きしめた



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