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私はどうも彰君に好きと言われた事を誰かに言うことが出来なかった
流れゆく時間がなにか変えるかとも思ったけれど、何も変わることなく始まった決勝リーグ
王者海南との試合は敗北、武里には勝利と言う形の今、湘北バスケ部の全国への道に立ちはだかるのは彰君の居る陵南だった
勝った方が全国へ
その状況がますます言うことの出来ない状況へ繋がってしまっている

「どうしたものかねこりゃこりゃ」
[何がこりゃこりゃなんだ、よっ!]
「いたっ!」

屋上で大の字に寝転んでいると、突然現れた洋平にデコピンされた
痛む額をさすり起き上がると

[高宮達と馬鹿やってる時も心ここに在らずな感じなのは、こりゃこりゃのせいか]

目の前に胡座で座る洋平が、足に片肘ついて 言ってみろ となんだか頼もしいじゃない
だから 実は… と彰君に好きと言われたと事を言うと

[だから陵南と海南の試合の時、そそくさと帰ったのか]

納得したように洋平は頷き、てかお前が好きなんて仙道趣味悪いだろ と聞き捨てなら無いことを笑いながら言われたが、以前洋平の元彼女に 洋平のどこが良くて付き合ってるのか と言ってしまった事があるので黙っておいた
(きっかけを与えてその時の事を思い出されてはめんどくさいのだ)

[で、仙道はなんでお前が好きなんだって?]
「私が彰君の事を好きじゃないから」

散々外面ばかり見て好きと告白されてきて一種のトラウマなのか、自分の事を好きだと言う女の子が苦手なんだよね と彰君は言っていた
だから常に友達として下心の無い私との関係が心地くて、まだ出会って間も無いのに気が付けば特別な存在になっていたと
そして今は付き合って欲しいとは言わないと言われた事も話すと

[なんかムカつく野郎だな]

自分がモテるって言ってんだぜ と洋平は舌打ちをして

[でもちゃんとお前の事考えてるから良い奴でもあるな]

と口角をあげてニヤッと笑った
お前その時に付き合おうって言われたらOKしただろ という洋平の言葉に エスパーかよ と驚けば お前が単細胞なんだよ と悪口を言われた

[悪い男だったらお前の気持ちなんて考えずに付き合って、あんな事やこんな事すぐしようとするぜ]

なのに仙道はちゃんとお前が自分の事を好きになった時に付き合いたいって言ってくれてるなんて、どんだけお前の事好きなんだよ趣味悪すぎ とまた悪口

「洋平ムカつく言うんじゃなかった!」

流石にここまで悪口を言われたら我慢ならんぞ
腕を組んでぶーぶー怒ると洋平は どうどうどうどう と私の髪をくしゃくしゃにした

[取り敢えず、仙道は第1段階成功してんじゃん]

お前ずっと仙道のこと考えてんだろ というニヤニヤ顔の洋平の言葉にドキッとしてしまい、確かに私は彰君に告白されてから今の今まで気がついたら彰君の事を考えてしまっている

[まだ好きってもんじゃないと思うけど、意識はし始めてる]

うーんと伸びをした洋平は

[うちと陵南の試合は見に行くんだろ?]
「それは…行くつもり」

頭に浮かんだ彰君の顔
告白されてからメールを数件した程度で実際には会っていない
なんだか会うのが怖いからだ
私を好きだと言った彰君が、私の知る彰君のままなのだろうかと

[お前はお前のままで居ればいいんだよ]

悩んでるのはお前らしくないぞ と手を引き私を立ち上がらせた洋平は、送ってやっから帰るぞ とそのまま私の手を引き屋上を出ていった



(告白されたらなんも考えずにOKしちまう名前に予防線を上手く張りやがったこと)
(そうゆう所はやっぱりムカつく野郎だな)
(と洋平が呟いた事を私は知らなかった)



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