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首を傾げた彰君に私の言葉の意味を教えてあげたら、名前ちゃんと一緒の時は特別 と頭をポンポンとされた
特別?なんだそれは と今度は私が首を傾げる番で

『名前ちゃんは好きという事が嫌でも考えちゃう人の事だと教えてもらった時、誰か思い浮かんだ?』

彰君は手の中の缶が少しだけ凹んだスポドリを1口口にして、自販機の近くの階段に横並びした私を真っ直ぐ見つめてくる
(飲み物なにか飲む?と聞いたら私の手の中のスポドリで良いと言ったからあげた)

「思い浮かんでないよ」

ミッチーに教えてもらった時に思い出したのは彰君ではあったけれど、それは好きという事がどういう事か教えてあげようと思ったからであって、嫌でもいつでも考えてしまうような人は居なかった

「彰君は?」

彰君は居たのだろうか
嫌でも考えてしまうような人が居たのだろうか

『名前ちゃんの事を嫌でも考えてた』

湘北まで行って一緒に帰った次の日から鳴らない携帯と睨めっこをして、知らない女子生徒に呼び出された時も、目の前のこの子が名前ちゃんだったら良かったのにと思っていた事を話してくれる彰君は少しだけ困った顔をして

『それってさ、俺は名前ちゃんが好きって事でしょ?』

問われれば、それは私がミッチーから教えてもらった好きって事で間違いないと思ったから頷くしかなかった
私は今、彰君に好きだと告白されていることを理解するのに少しだけ時間がかかったけれど

『でも俺は名前ちゃんに付き合ってとは言わないよ』

この彰君の言葉を理解するのは難しかった
好きなら付き合いたいって思うのが普通じゃないのだろうか
好きだと私に伝えたということはイコール付き合って欲しいと言うことでは無いのだろうか
難しい顔をしてしまっているであろう私に ややこしい事言ってごめんね と笑う彰君

『俺は、俺を好きになってくれた名前ちゃんと付き合いたい』

分かった? と聞かれてなんとなくだけど理解出来た私は 分かったよ と返した

『頑張るよ俺』

そう言い残して去っていった彰君を思い出しながら、皆の待つ客席へと向かうと 遅せぇよ と洋平に言われた
コートを見ると既に翔陽との試合が始まっていて、コートの片隅にはバスケ部の皆と一緒に居る彰君の姿があった



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