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無くしてしまったと思っていたリストバンドを持って現れた男は、牧紳一だと名乗った
名乗られた所でだから何なのだと思ったが、よろしくなと言う牧紳一にあっそとだけ返しておいた
笑うこの男は本当に不思議な男だった
普通は怒ってしまうような場面も気にも留めていない様子でケロッとしている
「なんであの日、あのコートに来たの?」
ポケットにしまい込んだリストバンドに触れて、ふっと浮かんだ疑問
コートは公園の奥まった場所にあるので、偶然通りかかったにしては不自然なのだ
『昔あのコートに行ったことがあるんだよ』
当時の事を思い出すかのように空を見上げる牧は
『その時にあのコートで言われたんだ』
神奈川No.1になるのは俺だ って
ふっと笑う牧に私の心はザワついた
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