何をするでもなく俺たちは屋上に居た
授業が終わるまでまだ時間もある
少し離れた所に座る名字に

『結局の所、バスケはいつからやってるんだ?』
「は?」

聞いてみたが、反応は先程と同じだった
やはりバスケの話は駄目なのかと空を見上げたら聞こえたため息

「バスケはした事ない」

答えればいいんでしょと観念したように言う名字も空を見上げていた

『でもフォームが綺麗だった』
「シュートだけ教えて貰ったの」

俺が綺麗だと言ったことが少し嬉しかったのか、ふっと微かに笑う名字は、角が少しだけ取れたようで

「私、激しい運動が出来ないから」

体育もいつも見学なんだと漏らした
何故激しい運動が出来ないのか聞くのは野暮だろう
そうなのか と静かに言うと、重い話をしてしまったと思ったのか、名字は少しだけ慌てたように あんたには関係ないけど とバツが悪そうにする
だから俺は

『君がバスケが嫌いじゃないだけで俺は嬉しいよ』

そのような体でもシュートを放つ名字の姿を思い出すと自然と顔がほころぶ

「アイツ余計なことあんたに言ったのね」

アイツとは清田の事だろう

『牧伸一』
「え?」
『俺の名前』

清田の事もアイツ呼ばわりなので名前を呼んでもらえるなんて思っては居ない
でもこうやって会話をして同じ時を少なからず過ごしているのだ

『よろしくな、名字』

名前を名乗る間柄位にはなったのでは無いだろうか



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