いつもの帰路
昔通っていたコートに少し寄り道だと足を運んだ
コートへ続く道はさほど変わることも無く、懐かしさを感じた
変わったのは俺だけでは無いのかと錯覚してしまうほどに
でもまだコートは残っているだろうか
少しずつ減りゆくコートの中で、あのコートは残っているだろうか
最後の曲がり道を曲がると、やはりさほど変わることなく立つリングが見えた事に安堵する
(何度も塗装され直し、古さは目立つが)
思い出の物がまだ残る安堵で顔が緩んでしまうのに気が付き、歩く速度も上がっている事に気がついた
そして、そのコートで女が1人シュートを打ち続けていることも
腕時計を確認する
やはりというか、女が1人で出歩くには危ない時間帯
かといって、危ないぞと注意する程に自分はお節介でもない
少しの間、ボールを放つと同時に揺れる髪を見つめていると、ガン!と音とともに弾かれたボールがコロコロと此方へ転がってきた
その瞬間、振り向いた顔は数週間前に俺を罵倒した女子であり、彼女は俺を見るや苦虫を噛んだような顔をする

[アイツ、バスケ嫌いだって言ってて]

思い出される清田の言葉
嫌いだって言っていた割に、シュートフォームは無駄がなく綺麗だ
そんなことを考えながら転がってきたボールを手に取ると同時に、奪われる様に手の中から居なくなる
そして近くのベンチに置かれた鞄を掴んで、足早に去って行く彼女の背中を見るのは2回目だった



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