理科準備室への道のり
短いと思ったが意外に長い
何故かってよくよく考えたら俺まともに名字と会話という会話をしたことなんてなかったからだ
何を話していいかの沈黙が痛い
いつもだったらこんな事考えないけれど、相手が名字なだけにどう会話をしたらいいのだろうかと考えれば考えるほど言葉は出てこない

「誰と間違えたの?」
『え?』

いっぱいいっぱいの頭に届いた言葉は理解するのに時間がかかった
思わず何?っと聞き返してしまうほどに

「私と誰を間違えて声掛けてきたのかなーって」
『潔子さ...あ、マネージャー』

逃げ出してしまいたいくらいの微妙な空気に終わったと確信する
ノートを半分こして横を歩いてって浮かれていたけれど、俺は1番最初にミスをしていた
ごめんと思わず謝ってしまう位に俺は追い込まれていたのかもしれない
別に謝ってほしかった訳じゃ無かったんだけどなって笑う名字に自己嫌悪
このままこの恋は終わりを告げるのかもしれない
見つめるだけのこの恋はどこにも進むことなく、ぽーんと馬鹿みたいに自分で空けた穴に落ちていくのかもしれない

「男子バレー部のマネージャさんて凄い美人で有名でしょ?
逆にあんな美人さんと間違えてもらっちゃってラッキーかも」

本当に気にすることもなく名字は俺に笑ってくれる

『可愛いよ!!』
「え?」
『俺は名字を可愛いと思う!!』

だから気づいたときはもう遅い
嬉しくってやっちまった...
自分で言っておきながら顔が熱くって覆いたくなったが両手にはノートがある
さっきとはまた違う空気が流れてしまって

「あ、ありがとう...」
『いや...どういたしまして』

バレてしまったのかもしれない
俺の恋心



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