[あ、ナマエさん!]
エルヴィン団長に御呼ばれしたので廊下を歩いていると、私を見つけたエレンが凄い勢いでかけよってきた
「どうしたの?エレン」
立ち止まって言えば不思議な顔をするエレンは一体全体どうしたんだ
私の顔に何かついているのか?と思ってしまう程ジーッとあの大きな目で見つめてくる
[ナマエさんですよね?]
「何が言いたいの?」
なんだかナマエさんが優しいからって失礼しちゃうじゃない
いつも私は優しいですって言いたい所だけれども…そう言われてしまうであろう原因が容易に想像ついたから何も言えない
ここ最近エレンが居ればところ構わず逃亡体制に入っていた私が立ち止まって彼が来るのを待っていたのだ
この変化に疑問を抱くのは当たり前
「…私も少しだけだけどエレンの気持ちが分かったから」
かな?なんて濁せば何を勘違いしたのか、この純粋で思ったら即行動ボーイは私が自分を少しでも好いてくれたと思ってしまったらしい
いきなり私の手を取っては、歓喜の表情を溢れんばかりにする
あー面倒なことになったなと苦笑いを漏らすと
『お前はこんな所で何してんだ』
聞こえてきたのは我らが上司、リヴァイ兵長様の声
[自分は、『エレン、お前じゃない』
どうやらそんな彼の言葉はエレンではなく、私に向けられたものだったらしい
何ですか?と問えば
『エルヴィンの所へ持っていく資料を俺の机に忘れて何してんだ』
ひらりと出された資料は団長に御呼ばれした理由なのになんとまぁドジな
わざわざありがとうございますとへらりと笑うと
『ところでエレン…』
一変して空気が変わる
ひくりと聞こえたエレンの息をのむ音
[なんですか…]
震えそうな声を必死に抑えて声を出すが
『ナマエからその汚い手をどかせ』
人の所有物に容易に触るなと教わらなかったのかと言われて思考停止状態
[え?所有物?え??]
状況把握に時間がかかっているエレンは一向に掴んだ私の手を離さない
それがとうとう兵長の我慢域を越してしまったらしく
『俺の躾持論は知ってるよな?』
豪快にエレンの腹を蹴る
突然の衝撃に受け身さえ取れなかったエレンは背を壁に打ち付けた
何度見ても兵長の蹴りはご遠慮願いたいほどの威力だ
『俺の許可なくナマエに触れるな』
分かったかと言う彼は私に資料を手渡して自室へと帰っていく
残された私とエレン
本当にエレンのキャパを超えてしまっているのだろう、なぜ自分が蹴られて地に付しているのかも理解していない
起き上れるかなぁ?と手を差し出すが、そういえば兵長の許可なく私にエレンは触れられないのだと今知った事を思い出して手を引っ込める
だから膝を折って目線をエレンに近づけれるだけ近づけて教えてあげるんだ
「私、兵長と付き合ってるの」
[…っ、えええええっ!?]
やっと状況を読み込めたエレンはただただ大声を出して驚いた
あの、あの、、
[2人とも恋愛なんてクソ喰らえってタイプなのに!!!]
廊下に響く声
「兵長は分からないけど、私はクソ喰らえって思ってたのは事実」
[じゃぁなんで!]
兵長と付き合ってるんですか!ってエレン君ちょっとは声のボリュームを下げようか
なんて思った所で彼も下げれないだろう
「エレンには酷い事を言うんだけど許してくれる?」
泣きそうな目でもしっかりと頷くエレン
「君に好きと言われた所で私の気持ちは動かなかったけど」
リヴァイ兵長に好きだと言われたら顔が勝手に緩んだから…あぁ好きなんだって
ポーズだけはいっちょまえに心臓を捧げていたけれども、誰になんて考えてもいなかった
それが彼にならって思ってしまったんだものしょうがないじゃない
そう言ったらエレンは私をずるい人だと言った
[そんな事言われたら、俺の入れる隙なんて無いじゃないですか]
睨みつけるエレンの目はうるうるとしていて、なんだか罪悪感からエレンを抱きしめてしまった
そして幼い子供をあやすかのように背中をポンポンと叩いたら、突き飛ばすかのように体を離しては 子供扱いしないでください とエレンはどこかへ行ってしまった
その日を境に、エレンからの愛の告白は終わり、代わりに私が兵長に愛を伝える日々が始まった
『うるせぇから黙れ』
「そんな事言わないでくださいよーぉ」
こんな幸せな日々がずっと続けば最高だ
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