『5年まえ壁を壊したのは俺達なんだ』

ライナーが壁を壊した…どうやって?
壁を壊したのは巨人であってライナーじゃない

「俺達って、達ってどういう事」

肩に触れるライナーの手を払いのけると痛い程力が加わっていたはずなのに、それは容易く離れていく

『5年前壁を壊したのは、俺とベルトルトなんだ』

私をジーっと見つめる目は嘘を言っている目ではない
むしろ冗談だったとしてもライナーはこんな冗談は言わない

「もしかして自分は巨人だって言いたいの?」

ありえない
人類の敵である巨人が同じ釜の飯を喰らってきた仲間だなんて

『そうだ…』

なぜ今私にそれを教えるの
私に教える事で得をすることなんて1つも無い筈なのに…

『俺は…お前が好きなんだ』

親や兄弟を殺したくせにお前に嫌われるのが怖いんだ
顔を手で覆いうなだれるライナー
そんな彼の頭に手を乗っけて優しく撫でた

「良い子良い子」
『ナマエ?』

私の行動に驚くライナー
そんな彼に今度は私は笑いかける

「私を救ってくれてありがとう」

私の方こそ彼に嫌われるのが怖くて言えなかったことがある
彼が殺したと嘆く親や兄弟の死なんて私は痛くもかゆくも、ましてや悲しみもない
むしろ…

「あんな奴ら死んでしまえと思ってた」

汚いけど、この思いが本当の私の思い
あんなゴミ屑たちなんて…死んでしまえと

「感謝してる」

壁を壊してくれてありがとうなんてエレンたちの前では死んでも言えないけど、貴方になら大丈夫でしょ
頬に手を添えちゅっと触れるだけのキスをする
すると骨を砕き臓器全て使い物にならなくなるのじゃないかというくらいの力で私を抱きしめるライナー
痛いなんて、離してなんて決して言わない

『一緒に帰ろう…』
「連れてってくれるの?」
『ナマエが一緒ならベルトルトもアニも喜ぶ』

あら、アニも巨人なんだなんて笑ったらライナーも笑った



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