ライナーが立ち止まった所は兵舎から少しだけ離れた所にある木の下であった
兵舎から微かに届く光のおかげで真っ暗という訳ではないのだが、目の前に立つライナーの表情はいまいち読み取れない

「クリスタを見てた」

そっとライナーの腰に手を回し近づく
するとよく見える様になった顔は動揺で揺らいだ

『見ていない』

ライナーが見たクリスタが制するユミルの言葉
愛の告白は当の昔に済ましている
私達は公表していないだけで恋人同士だ
私の腰に回されたライナーの手
2人の距離がまた少し近づく

「一瞬だったから許してあげる」

顎を彼の胸に当て上を向きニッと笑うと降ってきた軽いキス
唇にではなく頬に触れるそれが何ともライナーっぽい

『茶化すな』

あぁ、やっぱりというかばれてしまっているか
私がライナーの話を聞きたくなくて話をさせまいとしているという事を
腰に回っていた手が肩に触れライナーの腕の長さ分離れた2人の体
ライナーは俯いて表情を隠しているのかもしれないけれど、彼よりも身長の低い私の闇に慣れた目は表情をはっきりと確認できた
眉間に深く深く皺をよせ、唇を強く噛む顔はやっぱり私の聞きたくない話をしようとしてる顔だ

『ナマエは…エレンと同じシガンシナ区出身だろ』
「そうだけど」

なぜ今それを確認するのか

『親が巨人に喰われ兄弟も巨人に喰われ』

ただ1人生き残ったお前は…兵士になった
ライナーの言っている事は間違っていない
だから今それがなんだと言うのか

「それはライナーも一緒の事で」

巨人のせいで帰れなくなった故郷へと帰る、そう私に言ったでしょ
私の肩を掴む手に力が入ってぎりぎりと骨が痛む



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