「なんてエレンには言ったけど、私のキスの味は血の味だったって教えてあげてよ」

壁外調査はいつ何時誰が命を落とすかなんてわからない
それは俺だって例外ではない
もちろんナマエだってだ
遅かった…たどり着いた時にはすでに遅かった
右足と左腕を失ったナマエはもう…明らかに出血多量
それなのに俺の腕の中で笑いずっと何かを話すから、ちゃんと聞き取れるようにと耳を近づければ頭をぐっと寄せられ唇に触れた感触
それは紛れもないこいつの感触
こんな時にお前は…リヴァイの細菌なら誰よりも綺麗かなって思ったからなんて

『ついでに俺のは潔癖女の涙味だったとも教えといてやるよ』

今はもう麻痺から感じる事の無いであろう痛みから自然にあふれ出ていた涙でぬれた目元に唇を落とせば、俺の言葉は嘘じゃなくなる

「潔癖女って誰の事よ」
『勿論お前だが自覚ないのか?』

私は綺麗好きであって、潔癖はリヴァイじゃないと言うナマエ

『仮に俺が潔癖だったとしたら、血まみれのお前を抱きしめるなんて御免だな』

俺なりの冗談を言うと、あら珍しいとナマエは笑う
そして観念したのか

「潔癖同士仲良くしましょ」

手を出すので、何を今更とふっと笑うがその手は受け取る為に伸ばした俺の手をかすめ滑り落ちた
静まり返るただ赤が一面に広がった世界
あぁ…逝ったか…
意外にも冷静に現実を見つめる自分に驚いた
そして掴み損ねたその手を掴みぐっと腕の中の体を寄せ抱きかかえると

[兵長…?]

その瞬間背後から聞こえた声

『あぁ、エレンか
今戻ろうと思ってたんだ』

糞巨人どもはもうヤったから早くナマエと帰ろう
俺の言葉に顔を歪めるエレン
どうしたそんな顔をして
兵士たる者仲間の死で動揺するな
まして涙を流すなんて…そう言おうとして息が詰まって…
なぁ、エレンに伝えるお前のキスの味の話だが血の味ってのはどう考えても洒落っ気も無いだろう
だから…そっと触れるだけの…

『ナマエからお前へ伝言だ
キスの味は…』

キスをもう1度

『人類最強と言われた男の涙の味だった』




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