言ってしまったことは無かったことにはできない
だからって言ってしまったことを後悔したくない
だってこの気持ちに失礼じゃないか
私の言葉に瞳孔を開いて黙っている峯さん
それは小さすぎた私の愛の言葉がちゃんと届いているという事
「好きです」
さっきより幾分大きな声で2度目の告白をする
その瞬間変わった自分の周りの空気は、踏み入れてはいけない場所に足を踏み入れた時に鳴るような警報を頭に轟かした
『どういう…』
意味なんだと震える体
『やめろ…やめてくれ』
焦点が合わない目
ぶつぶつと呟く口
不安定な物体がそこにあった
『俺は貴女が...怖い』
そして崩壊していく様が手に取るように分かった
1歩1歩と自分から離れていく峯さんを、失いたくないと手を伸ばす
『触るな!』
でも伸ばした手は拒絶され、また離れていく
だから私も距離がこれ以上開いてしまわぬ様近づく
それの繰り返し
だが繰り返されたそれが終止符を打ったのは、峯さんの背中が音を立ててフェンスにぶつかった時
でも峯さんは頭を抱え込んでしゃがみこみ震えている
そこまでしてでも私から逃れたいのか
泣きたくなった
いや、泣いていた
ずっとずっと手を伸ばして泣いていた
「私は...貴方が怖いわ」
震える声を噛み殺しながら呟く
私の中に一瞬にして入ってきた峯さんが怖い
貴方に愛されたいと
貴方を一心に愛したいという気持ちが私を捕捉した
「峯さんを見てると自分を見てるみたいだから」
運命ならしょうが無いと、孤独に怯える癖にその打破が分からぬから気付かぬ振りをした
成長もせぬまま生き続け、暗いくらい道を歩み続ける自分はこんな死んだ目をしているのか
踵を返してブランコへ歩む
そして腰掛け鼻歌を歌えば、街灯がまぶしかった
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