走ってみた
日頃の運動不足もあってすぐに切れる息
いつもの公園について上下する胸を押さえながら目を閉じ、深呼吸をして息を整えた
ブランコに腰掛け地を蹴るとぎーぎーと鳴る音に合わせて歌を口ずさむ
そうすると思いだす私の中に芽生えた恋心
そして私の中で今まで大切にし続けてきた恋心も今日で終わり

目をつむって空を仰げば暗い視界は聴覚を鋭くする
足早に近づく足音が他の音をかき消して耳に届いた
顔を戻し目を開ければ公園に一歩足を踏み入れた峯さんの姿が視界に入ったから、ブランコから腰を上げて笑いかける
すると峯さんは眉間の皺をいつも以上に濃くして

『1人で危ないですよ』
「そう?」

私の心配をするなんて期待してしまうじゃないか

「峯さんが助けてくれるから大丈夫」

モノクロだった世界に色を付けてくれた峯さんは、小さいときに憧れた白馬に乗った王子様なのだ
きっと貴方は何処へ私が行こうにも探し出して助けてくれる
そんな夢を見続けていた
でも峯さんが私を助けるのは、彼と私の間にある壊しきれなかった関係性があるから

「昨夜飲んでいただけなかった紅茶は、峯さんに飲んでいただきたいと思って取寄せた物だったんでお届けしたんです」

私がそういうと更に眉間の皺が濃くなる
さっきからそうだ
私が何かを言うたびに濃くなる皺が何を意味しているかも知っている
耐えられなかった
耐えられなかったし、やっぱり彼の前に出ると私の頭は冷静な判断が出来ないらしい
大切にし続けてきた
それが長ければ長いほど、どうも制御できなくなってしまうのだ

「私、峯さんが好きです」



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