公園のブランコに腰掛け少し揺らす
ギーギーと雨風にさらされ錆びた鉄が音を鳴らした
いつもは心地がよいその音も今はどうも雑音にしか聞こえない
そう感じてしまう要因は先程耳にした言葉のせいなのは明白で

[すみませんが本日会長は接待で不在です]

秘書の片瀬さんに峯さんは在勤しているかと電話をすると、取引相手との接待へ向かうためにもう事務所を後にしてしまっていた
上げられた取引相手の名は私も知る者で、その人は無類のキャバクラ好きだった
そんな彼との接待となれば場所はキャバクラである事は必然
峯さんが女の人に囲まれるという光景を想像しては嫌悪が襲う
仕事だろうと峯さんがそのような場所に出入りすることが素直に嫌だと感じた
彼は会社のトップでありながら、端正な顔立ちである事から女たちが放っておくはずもない
おもむろに取り出した携帯の通話履歴を開く

堂島大吾

その名前で埋まっている通話履歴はつい昨日の日付のものもある
過保護な人なのだ
一緒の家に住んでいるはずなのに、忙しい中でも頻繁に電話をかけてくる

「お兄ちゃん...お願いがあるの」

数回のコールで取られた電話
兄なら私の願いを叶えられる



|

2 / 10




- ナノ -