部屋の空気が震えた
体も震えた
『な...』
酔っ払いが何言ってんねやって言おうと思った
でも出かかった言葉は再度触れた唇に飲み込まれた
前の女が越えては行けない塀を乗り越えた
唇の隙間に舌を這わす
「んっ」
少し逃げた顔を頭に手を回し引き戻し、触れるだけだったキスを深いものにする
最初は戸惑っていた舌も答えるように動けば微かに水音をたてた
そんな音に触発されてそのままソファーに押し倒すとぶつかった歯
だけどそんなの気にしない
気にしてなんかいられなかった
『そんな目すんなや』
期待するようなそんな煽るような目すんなって
加減ができなくなる
ワシはずっと好きだった
そして名前が自分の事を好いている事も知っていた
だけどこんな普通の女をこっちの世界に引きずり込むなんて出来なかった
だから伝える気もなかったし、流れで体を重ねるだけの関係で良いと思った
一時的にでも満たされる繋ぎな関係でだ
それなのにコイツは
「好き」
そう言って幸せそうに微笑むから
『ワシのが好きだ』
欲しくなった
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