平和に乾杯。 | ナノ





宴も終盤に差し掛かり、何人かは睡眠タイムに入った。
いつもの居残り組、あたしとゾロはむしろこれからエンジン全開になる頃でサンジは料理も一息ついて呑み直し。そうして3人での二次会が行われる今日はいつもは見ない顔が二つある。

一人目はルフィ。食べるだけ食べてはしゃいで呑んで寝るという、何とも本能に素直な彼。
二人目はエース。フラりと立ちよったここで初めての対面。ルフィのお兄さんで色気のある男。裸の上半身がセクシーだと会った時から思っているのは口に出さないでいる。

そんな彼らとの二次会スタートです。


「いやぁ、ルフィ、いい仲間を持ったなぁ。」

「ああ!あたりめぇだろ!」


ししし、と自信たっぷりに笑うルフィに少し照れた。

だけど思わず上がってしまう口角。その顔のまま、エースと目が合えば、目に入るのは少なくなったお酒のグラス。
あたしは職業柄のためか、ついついグラスに目がいく癖が治っていない。
小さくなった氷を足して、ウイスキーを注いでステア。………よくこのドギツイ酒をロックで呑むなぁ。

そんなことを思いながらステアしていると、やけに満足気なエースの視線が突き刺さる。


「とくにゆず、見ただけでもわかるぜ。」


頬杖付いててすこし顎を上げた顔の角度。それが、なんだか色っぽく感じる。


「…ん?」

「魅力的ないいオンナっつーのが、な。」


甘い声に乗せられた、手管なセリフ。まだこの駆け引きは終わらない。
目線をエースに合わせてにこりと笑いながら、よくステアされたグラスを彼の前に滑らせた。


「エース、ほんと上手言うね。」

「おれぁうそは言わねぇよ?」

「ふふ、それはどうも。」


机を挟んだ目の前に、余裕めいた笑みを浮かべてあたしの入れたお酒に口をつける。
それを美味しそうな表情で呑む彼は、やっぱり思った以上に駆け引き上手だと思う。

片側の口角を上げて、いたずらめいた笑み。挑発に乗るようにあたしも含み笑い。

腹の探りあいではないけれどそれに近い何か。うーん、ゾクゾクする。


「おい!なに二人きりの世界を創ってやがる!おれのゆずちゃん口説いてんじゃねぇぞ!」


言葉交わさず見つめ合うあたしたちに、声を張ったのはエースの隣に座るサンジ。
立ち上がってあたしとエースの間の空気を切るように手を上下に動かした。


「ハッ、ラブコックのじゃねぇけどな。…………ゆず、おれもその酒注いでくれ。」


それに乗っかったように皮肉るのはあたしの隣に座ったゾロ。珍しい、あまり洋酒は呑まないのに。


「エース!ゆずは渡さねぇからな!」


あたしの斜め前、所謂お誕生日席に座ったルフィが少しずれてる気がすることばを発した。独占欲が出てるセリフにドキリとしたのは間違いない。


「ンだよ、ゆずモテモテじゃねぇか、」

「えー?」


おもしろそうに笑みを深めて周りを見渡すエース。
視界を一周して、またあたしと目を合わせる。
その顔はすごく楽しそうで。そう、いたずらを思い付いたような悪い顔。
何を考えてるんだろう、と思いながらタバコに火を点けようとした。

ボッ、と聞きなれない音と共に点った赤い火。
エースの火が差し出されていて。

気が付いたら、タバコはフィルターを残して燃え消えていた。

危ない、と思う暇もなく、何が起きたかわからない。え、え?と固まっていた。

それから、おもむろにあたしの長い髪を一房手にとって。
自分の唇に引き寄せた。


「クックッ、まぁ、おれぁそっちのが燃えるけどな、」


にんまり。弓を描く唇に反して目元はギラリと光る。

その仕草と表情に、不覚にも胸が激しく動いてしまう。


「……エースずるい、今のまじでときめいた…!」


よくわからない。だけど一つだけわかる。

色気にやられた。

すいませんこの駆け引きはエースの圧勝認めます。


「「「………んなっ?!」」」

「おー、そんじゃおれのオンナになるか!」

「ふふ、どうしようかな。」

「え!?ゆずちゅわん!?」








駆け引きの続き。


(おいゆずおれと席代われ!目の前に座ってたらあぶねぇ。)

(ゾロ!それじゃおれとゆずが遠くなる!)

(えー、もう動くのめんどくさい。)

(ゆずちゅわん!じゃあおれとエースが代わるぜ!おいこら腰上げろ!)

(あー?おれだってめんどくせーよ、………グーーーー、)

(寝んな!)






prev next
back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -