食欲をそそるいい匂いが、この船に充満する。
その正体は紛れもなく目の前にあるもので。
赤々と輝くスープに色とりどりの野菜たち。そう、答えはキムチ鍋!!素晴らしいよね、この配色とバランス。ちなみにあたしはえのきとネギが好きです。
昨日酔っぱらってサンジにキムチ鍋食べたい〜って言った(らしい)のをしっかり覚えててくれてたみたい。まじ紳士だよね。
待ちに待った夕食時間。ウソップが作ったこたつにテンション上がるルフィとチョッパー。目がキラキラしてる。ナミとロビンも、たまにはいいわねーなんて言いながら暖かいこたつに足を滑り込ませて。あ、そうそうナミさん!こたつにみかんは鉄板だよ!
「ゆずちゅわ〜ん!どう?美味しいかい?!」
「ん、めちゃくちゃ美味しい!こんな美味しいキムチ鍋初めて食べたよ〜!」
「!!幸せぇぇぇえ!!」
大きいお鍋が3つ。男性陣2つと女性陣1つ。とにかく男性陣の鍋は肉がいっぱいで思わず笑った。
女性陣の鍋は本当に見た目麗しい。キムチ鍋ってこんなにおしゃれになるんだ…!と向かい側に座るサンジに感動を伝えた。
それにしても、ほんと酒が進むね!!
「これ何?魚?」
「うん、今日ルフィたちが釣った魚。クソ美味いだろ?」
「うん美味し〜い!ほっぺたとろける〜。」
魚特有のパサつき感もなく、しっとりとしてお肉みたいで。キムチのたれによく絡まってベストマッチ。お酒もぐいぐい進んで、饒舌にサンジと鍋の素晴らしさを語った。
そうそう鍋と言えばキムチなの!いや寄せ鍋も捨てがたいけどね、キムチは最初ビールでいって後から熱燗でしっぽりするのがいいのよ〜。(煮込みすぎてくたびれたネギがいい味出すの。わかる?)
なんて話してて。
お酒と言えばゾロで。
隣に座っているゾロに同意を求めるように声を掛けた。
「ね、ゾロもそう思うよねー!」
「おー、…酒が進みゃあ何でもいいけどな。」
そんなこと言いながらもいつもよりお酒が進んでいますよ。
ちょっとぶっきらぼうに答えたゾロはクイと酒瓶を空にして。素直じゃないんだから、と思うんだ。
「うん、だからサンジの作ったキムチ鍋ってお酒超進むよねー、大好きだよこの味ー!」
「ゆずちゃん…!おれ今猛烈に幸せなんだけど…!!クソ、もっとネギ買っとくんだった…!!」
「……おいコック酒もうねぇぞ。」
また鍋を誉めると、それに同意するはずもなくゾロはお酒の追加を頼んでて。ふふ、なんか夫婦みたいだーなんて思っちゃって思わず小さく吹き出した。
人に頼む態度がなってねぇ!って言いながら、キッチンに熱燗を作りに行くサンジは優しいなと思う。ん、あたしはこたつの魔力にハマって動けないんだけどね。
でもやっぱりキムチとお酒で暑くなってきちゃったよー。
あーどうしようかな。
「汗かいた〜。」
「だな、おれも暑くなってきた。」
「でもなかなか抜け出せないこたつマジック…!」
「ク、なんだそりゃ。………酒持って外に涼みに行くか?」
ちょうどできた熱燗を持って、甲板で呑もうという提案。
たしかにそれもアリだ。抜け出すには勇気いるけど顔も火照ってきたしなー。今日天気よくて星めっちゃ出てたし月もきれいだし。……うん、こたつ出ようかな。そうだな、出よう、タバコ吸いたいし。こたつマジック破れたり。はっはー。
「なに?!おいクソまりも!ゆずちゃんはこたつで鍋つつきてぇんだよ!そんでおれと鍋の素晴らしさについて朝方まで語るんだ邪魔すんじゃねぇ!」
「あ?!てめえさっきまで語ってただろうがよ。次はおれとゆずが酒について朝方まで語るんだよてめえこそ邪魔すんな。」
のんきにこたつに勝ったーって思ってたら、サンジとゾロがまた言い合い始めちゃって。お、おうどうした二人共。そしていつゾロとそんな約束をしたんだあたし。いやしてないだろ。
しかしもうあたしはこたつから出ていて。
グイ、とゾロに肩を寄せられて。…………あれ、ゾロ酔ってる?
「こたつはもう暑ぃからあっちで呑み直そうぜ。」
「おいおいおいおいクソまりも?なに肩なんて抱いちゃってんの?」
「……ちょ、どうしたの、二人共、」
「よしゆず行くぞ。」
「おーし、上等だ、…オロす!!」
「ハ、表出ろ、斬ってやる。」
こたつマジックに板挟み。
((コックのこと誉めすぎだろ、))
((クソまりも、じゃましやがって!))
(ねぇねぇ、とりあえずさ、小さい鍋によそってから外に出る?とりあえず呑みたいんだけど。タバコ吸いたいし…あーもう先出てるからー。)
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