いつもより饒舌になる。
いつもよりエロくなる。
いつもより笑顔が多い。
アルコールが入ると彼女は、
いつもより、意地悪だ。
「はい、ゾロたんあーん。」
「………ば、!…やめろ!」
「あーあー照れちゃってー。」
「ちげぇ!火傷する熱さだろそれ!」
少し離れたところで繰り広げられるこの会話。
今夜も先日に引き続き、またもやコタツで鍋をしていたんだ。ちなみに今日はおでんだ。もちろんゆずちゃんの希望。おれ特製のからし味噌に笑顔を向けてくれる彼女は天使のようにクソ可愛い。
ダイニングでもそうだが、ゆずちゃんとクソ剣士は隣り合わせに座ることが多い。つーか隣り合わせが当たり前みてぇな暗黙の了解。飯時に酒が出るから最終的によく呑む二人が肩を並べるっつー感じ。
そういうおれは向かい合わせ。まぁ…隣に座ったところで、おれはキッチンに出入りするからあんまり関係ねぇっちゃねぇんだけどさ。
ただやっぱりこれを目の前で見るのは、なぁ。…………クソ剣士まじで腹立つ!!
「ゆずちゅわーん!!おれにも、あーんしてー!!」
それでも黙って見てられるほどおれも大人じゃねぇし。
「はーい、熱々大根、あーん。」
半ば強引に二人の会話に割り込んで。それでもおれに意識を向けてくれる。優しい。
味のよく染みた大根を箸で一口サイズに割ってくれて、向かい側からそれを目の前に出してくれる。ホカホカと湯気立って、自分で作ったものなのにゆずちゃんの手にかかるだけでより美味そうに見えたりして。
つーか、まじでやってくれるんだな。いやわかってたんだけどな、なんと言うか……まじでキュンとする。
「!!あーーーん!」
「なんちゃってー!」
喜んで口を大きく広げたけど。ガチリと閉じた口は虚しくも歯が合わさっただけだった。
あと数センチのとこでゆずちゃんは箸を自分の口に向かわせていて。気がつけば大根は彼女の口の中。
……あーーーん、してもらえなかったんですけど!!ショック!!
「ゆずちゅわん…!!」
「んんー!サンジ、大根おいしーよ!」
「あぁ、そりゃ一流コックだからな…。」
誉め言葉は素直に嬉しいが……あーんしてもらいてぇんだけど!!焦らされたからなおさら!!
「ごめんごめん、はい、今度はこんにゃくね。あーーーん、」
「きた!あーーーーーん!!」
「うひ、やっぱりやーめた!」
やっぱりヤ!
(ゆずちゅわん……!!)
(こんにゃくもおいしー。)
(おれもあーんしてほしい!!クソまりもだけずりぃまじでまりもオロス!!)
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