とくんとくん、とくんとくん。
自分の心臓の音が煩わしい。
不寝番の夜。
寝静まったこの船で起きているのはおれとゆずだけで。
不寝番のおれの元に酒を持って現れた。真っ暗な辺りを明るく魅せる、華な女。
華奢な手で酌をしてくれる時に作る自然なしなり。
煙草を加える時に一瞬開く唇。
色気が割り増しになるこの時間は、得した気分になる。
「なんか久しぶりだね。」
「てめぇが風邪ひいて禁酒だったからな。」
「……わ、皮肉?寂しかったんだねー、ゾロ。」
「…うるせぇ。」
ぽつりぽつりと交わす会話は、居心地がよくて。
そんなに多くは交わさねぇがそれもまたいい。
ただ、おれのこのおとが、なりやまない。
(………ま、悪くはねぇよな、)
やまないおと。
おまえも、おれと同じだったら言うことねぇのにな。
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