珍しい薬草が有名な島に上陸した。チョッパー、ウソップなんかはここぞとばかりにナミさんに小遣いをせびって、おれも多少多目に貰ったお金を手に島に足を着けた。
一流品の薬味やハーブを満足に買えて。おれは早速レディたちのために、今日のおやつに一緒に出すお茶葉は何にしようかなんて考えながら歩いていたんだ。
ふと目に入ったのはグレーのドルマンワンピに身を包んだ美女で、自然と足は美女に向かう。
後ろ姿からでも分かる、何を買おうかと迷ってる雰囲気。
クソだらしねぇ顔しながらその美女、ゆずちゃんを見る店主に睨みをお見舞い……しようと思ったが突然ゆずちゃんが振り返ったから止めておいた。
つーかこれが見返り美人ってやつなのか。クソ綺麗で可愛い笑顔でおれのこと見てる彼女を今すぐ抱きしめてぇ気持ちになる。
「あ、やっぱりサンジだ。」
「え、やっぱりって。おれって気付いてたってこと?」
「うん、なんとなく、サンジがいるなーって。」
「うおそれヤベェ、もしかして愛のパワー!?」
冗談めかして言ってもくすくす笑っていつも流される。その交わしかたも上手い具合に不快感も違和感もねぇんだ。
ゆずちゃん曰く、元の世界でしてた仕事で、そうゆうのを交わすのが上手くなったんだと。それってよく言い寄られてたってことじゃねぇか。
今さらそれに対して苛ついた気持ちを出すのも変な話だが、やっぱりどうしても嫉妬は感じちまうよなぁ。クソガキかおれは。
ゆずちゃんの手に取られていたのは発汗作用のある葉が入ったティーパックのようなもの。これは紅茶でなく、風呂に入れるやつなんだと。
メッシュの素材のパックを少しこすって匂いを確認していて、くぁっ、っつって眉をしかめた。刺激の強い匂いをそんな直に嗅ぐから鼻の奥にツンときたらしい。その一連を見てつい吹き出しちまう。いや、ばかになんてしてねぇよ、するわけねぇだろ、このおれが。
クソ可愛いんだぜ、ゆずちゃんの仕草って。
「くくっ、わりぃ、つい。」
「もー…、あっサンジは発汗作用のあるお茶買った?」
「いや、お茶は買ってねぇな。」
お茶はやっぱりスイーツに合う爽やかなミント系とまろやかなローズ系のものを多く選んだ。
発汗作用のある調味料は買ったんだけどな。
「じゃ、迷ったけど買っちゃおう。久しぶりだ、こうゆうの買うの。」
「お酒ばっかだもんな。つーかゆずちゃんこれクソ効きそうだけど大丈夫かい?」
「ん、大丈夫だよ。もともとこんなの好きだし。」
両手いっぱいにそれを大人買いしたゆずちゃんを少し心配したが、まあ彼女が大丈夫ってゆうなら大丈夫か。
しかし風呂で汗かくってのもなんか矛盾を感じるよな。
ぴりぴりする。
買い物が終わって一緒に船に戻り、早速パックを入れて入浴したゆずちゃんは、風呂場からキッチンまで聞こえるようなクソ甲高い悲鳴を上げた。
焦って脱衣場に行ったら身体を真っ赤にしたゆずちゃんが冷たいタオルに身を包んでて、刺激が強すぎて入れない…と涙目になっていた。クソ萌えた。
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