「あ、これ面白そう!」
「どれだ?……って絵本じゃねぇかっ!」
「対象年齢5歳。…よし!」
「5歳じゃねぇだろっ!?」
えええぇえぇ、と目を飛び出してチョッパーはあたしを見る。気にしちゃ駄目だよ、チョッパー。女性に年齢のことを突っ込むのはタブーと言うものだ。
さて皆さんお察しの通り、あたしは今可愛い可愛い船医さんと本屋さんに来ている。
彼がコツコツと貯めていたお小遣いが万を期したみたいで。あたしにはよくわからない難しそうな医学の本を買うから本屋に行くんだと嬉しそうにしていたのを発見した。なんか可愛いから一緒に着いてきたよ。
でも本当にチョッパーは勉強熱心で偉い。勉強家だねと言えば、お馴染みのふにゃふにゃポーズでバカヤロっと言われた。あれツボ。可愛すぎて胸が痛い。
と、まあ折角なので自分も本でも買おうかなと。読書は嫌いではないけど、やっぱりこの世界の本はよくわからない物が多いので。結果的に絵本にたどり着いちゃうんだよね。
あっでも猫と海賊の物語って本は気になった。内容はホラーらしくチョッパーに止められた。……怖がりさんだな。ってゆうかどんなストーリーなんだ。猫と海賊……。
「お目当ての本あった?」
「おう!あったぞ。」
「良かったね。これでまたチョッパーの医学レベルがアップするんだね。」
「おれ頑張る!」
ほくほくと喜びを露に、背中に背負っているリュックに本を入れるチョッパー。
今すぐ読みたいんだなー、歩幅が大きくなってる。…あれ?スキップしてる?
……本当に良かったねぇ。
ナミにこれからはお小遣い多目にあげるように交渉してあげる。
期待はしないで。
「じゃあ帰ろっか。」
「え?ゆずは何も買わないのか?」
「ん〜、ピンとくるやつ無かったし。」
「そっか。何か付き合わせて悪かったな…。」
「いやいや。チョッパーの嬉しそうな顔見れたしよかったよ。」
あたしが勝手に着いてきたようなものだし。それでも少し申し訳なさそうな顔をした彼に、にこりと微笑んで。そしたら笑顔を返してくれた。
本屋を出て船に戻る帰り道。
この町は夕刻になるとチラホラと出店が出るみたい。
それが何とも少年の心を賑わせるらしく。
本も読みたい、すぐ読みたい!……けど、けど……!!
ちょっとだけ出店見たい…!いいよな、本は逃げないし……!!よし、ちょっと見よう!ちょっとだけだからなっ!
そんな考えがすぐ読み取れる。若いって素晴らしい。
かくいう自分も、懐かしい感じの出店に少しウキウキ。表に出さないのが大人だよ?
近くの出店を見てみると、水風船、金魚(らしき小魚)すくい、リンゴ(らしき果物)あめ。元の世界の夜市を思い出すようなそんな明るい、懐かしい雰囲気。ああ、いか焼きの匂いがそそられる!
「あ!わたあめ!」
キラキラした目で、ヒュンっと瞬間移動よろしく、わたあめ屋の前に行くチョッパー。
可愛いなあと見ていたら、途端にハッとした表情に。
どうしたのかと思い、彼の元へと歩いて行く。
「どしたの、チョッパー?」
「……!何でもないんだ、帰ろう!」
「え、わたあめは?………あ、もしかして。」
そっか、さっきの買い物で全財産使ったんだ。コツコツと貯めていたお小遣いだし無理もない。溜まった瞬間に今日の遊ぶお金の事も考えてなかったのがチョッパーらしい。
そんな彼に、あたしはゆるく笑ってお店のおっちゃんにわたあめを2つ頼んだ。
「えっ!?ゆず!?」
「ふふ、ひとつあげる。」
「……!ありがとう〜!」
めちゃくちゃ喜んでくれたチョッパーに満足して、おっちゃんにお金を渡した。
あたしはお小遣いちょっとあればすぐ増えるからね〜。そのおかげでみんなのお小遣いが増えてんだよ?ギャンブルに感謝してね?
「まいど!これ、オマケでちっちゃいけどあげるよ!」
「わ、ありがとう。」
大きなわたあめを2つ貰ったあと、それとは別に小さいサイズのわたあめを貰ってしまった。…ちょ、こんなに綿あめいらな…!
……いや、いる。チョッパーの目の輝き半端ない。よかったねチョッパー。可愛いよチョッパー。
「よかったねーほんと。今日はツイてるね!」
「ゆずのおかげだ!ありがとう!」
「はは、ありがとうは今日だけで聞きあきたよ。」
むぐむぐと頬張りながら、また帰り道を歩く。
何だか今日は癒された…!チョッパーに癒された…!
と満足しながら彼に2つ目のわたあめをあげた。
癒し。
(えっこんなにくれるのか!?)
(うん、たんとお食べ。)
(ゆず優しいな〜!!)
(何でこの子こんなに可愛いの!)
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