いつも美味しいご飯を作ってくれる料理人のサンジ。
その綺麗な手は、魔法の手なの?と、会った当初は子どもみたいなことを思ってしまったのも仕方ないと思う。
ブラブラと、あてもなく街を散策。着いた島は穏やかで、漁業が盛んな島だった。
屋台なんかも沢山出ていて、ルフィたちが向こうでワイワイはしゃいでいるのをつい先程発見したばかり。そして捕まったのは言うまでもなく。そんなルフィたちから何とか逃げてきて、今に至る。
(あんなに食べたら、サンジの夕飯食べれなくなっちゃう。)
仲間のサンジが作る、絶品のご飯。冒頭の思いはそれらを想像していて出てきたもの。
(……あ、噂をすれば、何とやら。)
噂はしていないけど、今まさに頭の中にいた人物を発見した。何やら魚を買おうとしているところのようだ。店のおばちゃんと話している。でも顎に手を当てて、何か悩んでいるみたい。
遠くからでもあの綺麗な金髪は、やっぱりすごく目立つ。
陽射しに反射して、サンジがキラキラして見えた。
「サンジ、買い出しお疲れ様。」
「あ、ゆずちゃん。あれ、一人かい?」
「そうだよ。」
声を掛けると、ニコっと微笑みながら、返事をくれた。
何を悩んでいたのかと聞くと、今日の夕飯。目の前にある活きのいい魚を、どう調理しようかと想像していたらしい。
悩みが正に料理人って感じでついにやけてしまう。
「ゆずちゃんは、魚料理だったら何が好き?」
「あたしは生で食べるのが一番好き。刺身、あと、カルパッチョとか。柚子風味の調味料があれば最高だよね!」
「なるほどね。」
よし、じゃあ今日の夕飯はそれに決定だ。ありがとう、助かったよ。って言われて。
あれ、でもあたしの案でよかったの?あたしは嬉しいけど。ルフィは物足りないんじゃないかな〜…いやそれはないか、サンジのご飯は絶品だから。
「レディが食べたいものを作るのが幸せなのさー!」
そう言って、このお魚を丸ごと買うサンジ。太っ腹〜。今日のご飯は白ワインが合いそうだな。あ〜ヒレ酒も合うな〜。やべ、よだれ。うーん早く食べたい。
購入したお魚をリヤカーに乗せて、市場を二人で回ることにした。
そういえば市場って初めて。超新鮮な感じだな。でっかい魚がいっぱいいる〜。
キョロキョロ珍しげに辺りを見ながら歩いてると、いつの間にか目の前にいたサンジにぶつかってしまった。ごめんなさい。
「大丈夫かい?」
「はは、ごめん。キョロキョロしちゃってた。」
「そういやぁゆずちゃん市場は初めて?」
うん。コクンと肯定すれば、サンジは優しい顔で、「じゃあ案内させて下さい、プリンセス。」なんておどけながら言う。釣られて笑ってしまった。
そっか、サンジがキラキラしてたのは、やっぱり髪のせいだけじゃなかったんだね。
それからサンジのエスコートの元、二人で沢山話ながら市場をゆっくり回った。
たまに珍しい魚を見るとサンジは見るからにワクワクしていて、あたしは可愛いお魚がいると突ついて遊んで怒られて、とにかく新鮮で楽しかった。
その間もやっぱりサンジはキラキラしていた。
「市場って楽しいんだね。」
「ゆずちゃんが居たから、おれもいつもより楽しかったよー。楽しいって言ってくれてクソ嬉しい。」
「またまた〜。…ね、また今度市場一緒に行っていいかな?」
「…もちろん!大歓迎だよ!」
少し吃驚した顔になったサンジ。だけどすぐに了承してくれて。
あたしは何だか楽しくって、くるりと彼を見てから口を開いた。
「今日はサンジのキラキラの秘密を知っちゃった。ふふふ。」
「ん?キラキラ?」
「サンジはね、市場にいる時と料理している時、すっごくキラキラ輝いてる。そのお魚も、船に帰って、サンジの魔法の手で美味しくなるでしょ?だからいつもサンジが作る美味しい料理は、キラキラ輝いて見えるんだよ。いつも美味しいご飯、ありがとう。」
にこり。サンジにいつものご飯のお礼を言った。こうやって改まって言う機会はなかなかないからね。恥ずかしさもあったけど。
言えるときにきちんと言いたかったんだ。
また吃驚した顔で、あたしを見ている彼。くわえていた煙草が地面に落ちて、彼は我に返った。
「ゆずちゃんにそんなこと言われて……クッソ幸せー!!」
うおー!!と海に叫ぶサンジを見ると、ああ、勿体無い。キラキラが無くなっちゃった。
少し呆れたけどやっぱりそれが彼らしくって笑った。
キラキラの理由。
((…おれからしたら、ゆずちゃんのがキラキラしてるっての。))
「今日もご飯が楽しみだなー。」
((クソ、可愛過ぎて胸が痛い……。))
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