「…ちょっと待って。…ゆず、それは、どうゆうこと?」
ナミが一呼吸置いて、真剣に聞いてくる。
心なしか顔に冷や汗が出てきている。
びっくりさせてしまってごめん。
「本当にこの船はよくわかんねぇ奴ばっかだぜ…。」
「ゆずは異世界人なのか?すげぇ!」
お酒を呑みながら呆れるゾロ。キラキラした目を向けてくるチョッパー。自分のことながらにあたしも異世界から来たってすごいと思う。
「ゆずちゃん、君の美しさの秘密は異世界人だったからなのか!そんなミステリアスな君も…素敵だぁ〜!!」
「異世界って…どうゆうことだ?」
何故か目がハートのサンジと、正常な反応のウソップ。ウソップ、君は常識人だ。もうサンジは意味がわからない。ずっとくねくねしてればいいよ。
「ロビン…何かわかる?」
「パラレルワールドが存在するって…聞いたことはあるけど。まさか、本当にあるなんて。」
ナミの問い掛けに、興味深そうにあたしを見るロビン。人体実験とかしようと思わないでね。
てゆーかアレだな。
みんな、疑うという言葉を知らないのかな。
いやもちろん疑わないでくれて嬉しいけどね。
なんて言うかもうちょっと違う反応を想像していたから。
だけど唯一黙ったままなのがルフィ。
キャ、キャプテンさまは疑ってるのかしら。ああ、そうだよね、自分の仲間に異世界から来ましたー☆なんて言われたらびっくりするし何言ってんだコイツって思うよね。
あたしはちょっと不安げに離れた場所にいるルフィを見る。目があった瞬間、ルフィはパァっと顔を輝かせて口を開いた。
ああ、何言われるのかな。異世界なんて意味わかんねーとか言われちゃうのかな。そしたらあたし立ち直れないよ?!
「ゆず!」
「ん?…………え?」
え、あれ、何でそんなにキラキラしてんの。
「ゆずは不思議世界から来た人間なのかー!」
ガシリと肩を掴まれて、勢いよく喋りだすルフィ。
しかも不思議世界って。まあいいけど。
それより、ちょ、待って待って。
今腕伸びたよ?!
ちょっと離れてるとこに座ってたのに今真正面にいるよ?!
みんな普通にしてるけど、お宅の船長さん腕伸びたよ??!!
「ルフィ、そうだよ嘘じゃないよ、ってゆーか腕!伸びたんだけどなんで!?」
「ああ、おれゴム人間なんだ!それよりゆずは不思議人間なんだな!しっしっし、おもしれー!」
「…え、え?!」
「わかるんだ!不思議だけど嘘なんかじゃないって!だから、おめぇは!おれたちの仲間だ!」
おれたちの仲間だって。
嘘じゃないって信じてくれるんだって。
どうしよう。
今あたしはモーレツに感動してる。
ゴム人間っていうのがよくわかんないけどまあいいやって思えるくらい感動だ。
全く不安なんてなかったなんて言えば嘘になる。
ここに来て、自分を保つのに必死で。でも必死なんてバレたくなくって。お酒もいっぱい飲んだけど、酔いなんて廻らなくて。
峰さん、どうしてって気持ちが消えなくて。それはもちろん今も消えたわけではないけど。
異端児だ、って拒否されることはないと思ってたけれど、やっぱり少しこわかった。
あたしからしたらみんなは漫画のキャラクター。
ここではあたしは異端児という現実が受け止め切れなくて。
でもここに居たらみんな息して、夢を持って、必死に今日を生きていて。顔だってキラキラ輝いてて。手から伝わる温もりは嘘なんかじゃなくって。手よりもっと、心は暖かい。
「………ありがとう、信じてくれて。ありがとう、仲間にしてくれて。」
にこり。
お礼の気持ちを微笑みに乗せる。
みんなの優しさに心を撃たれた。
よーし、もうこうなったらこっちの世界を楽しもう!
「!しっしっし!…ゆず!笑ってる方がいいな!」
「……、異世界から来たとかもう問題にすらならねぇよ。」
「……くっ、駄目だ。ゆずちゅあんの笑顔が眩しすぎる!かわいーいいい!メロリーン!」
「うん、この世界楽しむことに今決めた!」
話が一区切りついたところで呑み直そう。
肩の荷が降りたみたいだ酒がうまーい。
「ゆずは異世界人なんだな!どんなとこかまた聞かせてくれよ!」
「もちろん!チョッパーかわいー!」
みんな不思議世界で大人気の漫画のキャラなんだよ、って言おうかな、と少し頭に過ったけど。
あんまり読んだことないし、…まあ正直な話、面倒くさいから言うのは止めてとこ。
仲間になりました。
(峰さん、どうしてこうなったの?何がしたいの?何か目的はあるの?)
やっぱり疑問は消えないけれど、いつかわかるはずだと信じてる。
それまで楽しんでやろう。
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