「おまえひとりなんだろ。」
「うん。」
「さみしいだろ。」
「………うん。」
「なら、いっしょに冒険しようぜ!」
また、あの太陽みたいな笑顔でそう言われた。
ルフィの笑顔って、いいな。
「冒険……よりもお酒が呑みたい。」
「なんだおめぇ酒好きなんか!しっしっし、もちろん宴もしよーぜ!」
いつの間にか。
泣きそうなくらいの胸の痛みはなくなってた。
ルフィの笑顔にやられたなこりゃ。
「話はまとまったの?」
「おーなんだみんな聞いてたんか。」
船に入ったときに見たオレンジ色の髪の女の子が話しかけてきた。
「わたしはナミ、航海士よ。」
「ふふふ、ロビンよ。よろしくね。」
「天下のキャプテンウソップ様たぁ、おれのことよ!」
「トニー・トニー・チョッパーだ!医者だ!…男だ!」
「こ〜んな可愛いレディが仲間になるなんて!!神はおれに微笑んでくれた!…改めまして、おれの名前はサンジ。料理人です。よろしくね、プリンセス。」
「ハ、おまえ酒呑めるクチか。付き合ってもらうぜ。」
あたしたちの会話をこっそり聞いてたらしい他のクルーたちが、一斉に医務室に入って自己紹介をしてきた。
全員で聞き耳立てていたんだ!
それより、よし。名前は覚えたぞ。ナミにロビンに…ぶつぶつと小さく復唱して、頭に完全インプット。
名前覚えるのは得意です。
それからひとりひとりに向き合って。
「あたしはゆず。好きなものは平和と酒と煙草とギャンブル。よろしく。」
にこり。
ここに来て初めて笑顔ができた。かんたんな自己紹介を述べればまた一斉に、よろしくって言われて少し照れ臭い。
あたしたちの空間にほんわかした雰囲気が流れている。
それを壊したのはルフィ。
「ほんじゃー宴しよーぜ!サンジ!肉いっぱい出せよ!」
「了解、船長。」
早速あたしの歓迎会が行われるらしい。わーいお酒お酒!
あ、でも新人だから何かお手伝いしなきゃいけないのかな?
「ゆず!先に部屋案内するから着いてきて。」
「あ、うん、ありがと。」
どうしようかと思っていたら、ナミに救われた形になった。
うーん、ナミもロビンも美人だしスタイルいいね。仲良くなれたらいいな。
船の中を案内してもらって、最後に着いたのは女部屋。
「明日島に着いたらベッド買うから今日はソファーで我慢してね。」
「ごめんなさいね、あ、パジャマとかは貸してあげるわね。」
そこまで言われてハッと気づいた。
あたしの荷物ってどこなんだろう。確か、峰さんの船に一緒に乗せたはず。ヤバいすっかり忘れてた。あの荷物には洋服たちと、宝石と、お金がある。あ、ベリーってもしかしてこの世界のお金なんだろうか?いやきっとそうに違いない。
「ソファーで上等!ところでさ、あたしの荷物ってこの船にあったりする?」
「あ、あれのこと?」
ナミの指差す方を見れば、あった!あったよー、あたしの戦利品たち。
「多分ゆずの荷物だと思ってあの船から降ろしてたのよ。」
「わー、ありがとう。」
「それ全部あなたの物?」
ロビンがそういてくるのは仕方ない。だってこれ、改めて見るとものすごい量だよね。
「そうなの。いっぱいあるし、ナミもロビンも気に入ったやつあればあげるよ、新品だよ。」
「くす、いいの?でも本当、沢山あるわね。」
「あと、この船って金庫とかある?」
「金庫は航海士さんよ。」
「………へぇ。」
人間が金庫って。いや、うん、いいと思う。すべてわかった、この船の金銭事情。
「何?あんたまさか私から金取るき?」
怪訝な顔をして、お金はないわよ!!と吐き出す。
借りるなんて言ってないのにこの反応。シビアだ。この船の金銭事情は複雑そうだ!!
「あ、違う違う。これ預けとこうと思って。」
少し大きめの鞄をナミの前に置く。中身は勿論カジノで儲けたベリーというお金が入っている。これを預けようと思って。
ぎっしり入ってる。そういえばどのくらいあるんだろう?数えてなかったや。
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