はっきりしねぇな、と言われても。あたしも今の状況がわかんないからはっきりしようがないよね。
でも彼は。彼らからは敵意とかあたしを怪しんでいる感じとか何にも感じられなくて。
純粋に、あたしのことを心配しているようなそんな感じが伝わってきて。
でもその彼ら、漫画のキャラクターなんだけど。
「……おい、大丈夫なのか。」
緑の髪色に腹巻き。三本の刀をさしているのはえーっと名前はゾロ……だったかな。眉間に寄るシワがあたしをいくらか現実に引き戻してくれた。
だけど上手く声がでない。
「クソまりも!お前顔面凶悪なんだからこの可愛子ちゃんがビビるだろうがひっこんどけ。……麗しのプリンセス。顔色が優れないようですがお身体の方は大丈夫ですか?」
そんなあたしの様子を心配してくれたのは金髪にスーツ。くねくねしたり目をハートにしたりの眉毛が特徴的な彼の名前はサンジ……だった気がする。
「お前は本当にそんなんばっかだな。ラブコック。」
「……おいこらクソ腹巻きてめぇ今何つった?」
「ダーツ眉毛。」
「オロす!」
繰り広げられる喧嘩腰の様子にえっと、どうしたらいいものかと。対応がよくわからなくて、麦わら帽子の彼を見る。
「ああ、あいつらはいつもあんなんだから。」
「……。」
何というスルースキルの持ち主なんだ。やっぱりあれか。慣れってやつなのか。ちょっと感心しちゃうよ。
あ、思い出した。
ワンピース。
すごく人気の海賊漫画だ。
えっと。
実感ないけど。
漫画の世界に来てしまったみたいです。
バカみたいと思うかもしれないけれどこれは夢ではないらしい。ひっそりつねった横腹が痛い。
そして何より会話がリアルに頭に響く。
あーこんなことなら漫画ちゃんと読んでおくんだった!
まあ今さら悔やんでみたって仕方ないし。どうやらほんとにこれは夢じゃなく現実っぽいし。どうしたもんかねまじで。
と、とりあえずタバコでも吸おうかな…!
「なあ、それよりおまえ1人でさみしくねぇか?」
肺に入る煙が久しぶりに感じてくらりとぼやける。
それを正してくれた麦わらの彼は頭の後ろに手を組んで、ニコニコしながら聞いてきた。
「え、あ、うん。」
さみしくねぇか?って。
そんなこと思う暇もなかった。
でも確かに。今改めて思うと1人は寂しいのかもしれない。
と、いうかこのわけもわからない世界に1人。
………あ、絶対寂しい。
「おい、ルフィ、まさか。」
言い合いしていた二人がピタリと動きを止めてあたしたちを凝視した。
え、な、なに?なんなの?
戸惑って麦わらの彼を見る。
するとなんということでしょう。
彼は素晴らしい笑顔でこっちを見ているではありませんか。
「おまえさ、おれの仲間になれよ!」
開いた口が塞がらないとはこうゆうことを言うのか。
何がどうなったらこの発言が出るんだろう。
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