(………それにしてもよく寝るなー…。)
あたしの目の前で眠りこけているのはゾロ。いや正しくは、寝ているゾロの前に座っているあたし。
口を大きく開けてグーグーガーガーいびきをたてて爆睡中。横になり片肘をついて手のひらを枕にしている休日のお父さんスタイルだ。この体制を見ると、枕にしている手をスコーン!って払いのけてやりたくなるよね?そう思うあたしはガキなのかしら。
というか…疲れないのかな。
やっぱり鍛え方の違いだろうか。こんな寝方したら首も手もダルくなるんだけど。そうですか、ゾロさんは違いますか。
ツンツン。
つついてみる。無反応。
ワシャワシャ。
髪を撫でてみる。あ、眉間にシワ寄った。…しかし起きるようすはない。
ゴソゴソ。
あ、ゴソゴソってのはね、あたしのポケットを探る音ね。
………実は忍ばせておいた油性マジック!
これだけ爆睡してたら大丈夫、かな。よしこれを使って…。
「ゆず、なにしてんだ?」
「ルフィ!」
ゾロのきれいなお顔に落書きだ!と目論んでいたら、やってきたのはルフィ。思わずおっきな声を出してしまって慌てて声をひそめる。
ルフィも、しずかにね!
「(うひひ、寝ているゾロにイタズラしようと思ってるとこ。)」
「(うしし!おんもしろそ〜、ひまだしおれもやる!)」
ヒソヒソと目的を伝えればあっという間に共犯者のできあがり。キュポン、とマジックの蓋を開けてまずはルフィが落書き。
「(…くっ、定番だけどゾロだからウケる…!)」
「(ゾロひげ似合わねぇよな!にしし!)」
描かれたのは鼻の下にひげ。くるんってなってるやつ。シンプルだけどいつものゾロを思ったらそれがやけにウケる、強面から一転、アホ面だ。
「(ほい、次ゆずの番な!)」
ひげの他に瞼に目を描き足してる!ヤバい超ウケる。お目めクリクリのゾロがこっち見てるよ!
吹き出すのをなんとか堪えながら、あたしは眉毛にマジックを走らせる。
なめらかな曲線を意識して、できあがったのは。
「ぶはっ!!やべぇゾロがサンジになった!!」
「ちょ!声でかい!!」
「……どっちもうるせぇよ!」
思った以上におもしろくできあがったのはアホ面ぐる眉ゾロ。ぷふ、みなさんこれが世界一の剣豪になる男です。
ヤバいヤバいヤバい超ウケる、ルフィのせいでゾロ起きちゃったじゃん。(ゆずも声だしただろ!)
とりあえず逃げよう、ルフィ。
イタズラ子ども。
(おい、コック、酒くれ。)
(あ?…………!!!おま!おれのことばかにしてんのかよクソ剣士!)
(は?なに言ってんだぐる眉。)
(!!!だからてめぇもそのぐる眉になってんだろうがよ!!)
(…………おまえなに言ってんだ、)
(だーかーらーよー!!オロスぞ!)
((……ゾロまだ落書きに気付いてないねぇ。))
((しし、あいつアホだな!))
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