昨日までは割りと暖かかったのに、今日は少し冷えるな、と思っていたら雪が降ってやがった。
ルフィたちが喜びそうだなと思って甲板に目をやると案の定雪合戦を始めていて。無意識にゆずの姿も探したが、そこには姿は見えなかった。
ちなみにおれは今トレーニングを終えたばかりだ。甲板での雪合戦の途中でおれに気付いたチョッパーは、おれの所まで小走りで寄ってきた。何かと思えば「汗で身体が冷えたら大変だから、風呂入って流してこい。」だと。ああ、わかったよと自然に口角が上がり、頭を撫でてやった。また雪合戦に戻って言ったチョッパーを見送り言われた通りに風呂場に向かう。
途中、嗅ぎ慣れたワインの匂い。
洗面所にはゆずが髪を乾かしているところで。
ワインの香りの入浴剤を買ったんだと最近毎日容れているのを思い出した。おれは今まで入浴剤にそんなに興味もなく、あっても檜とか森林の匂いを好んでいた。そんな自分がワインの香りなんてしゃれたやつもいいもんだと感じたのはすぐだった。
「あ、ゾロお風呂入る?お湯抜いちゃった、ごめん。」
上がりたて独特の桃色の頬、湯気が出る身体、少し濡れた髪。
ガシガシとタオルで髪を拭くゆずにどきりとした。
「ああ、別にシャワーでいい。…ってか意外だな。」
「ん?何が?」
「いや、雪降ってっから、お前もはしゃいでんのかと思った。」
甲板であいつらとはしゃいでる姿が安易に想像できたんだが、こいつは風呂に入っていて。何で今の時間に?と思った。
「あー、雪ね。好きだけど寒さには勝てないし。先に身体温めて、熱燗でも戴こうかなと。」
「年寄りみてぇ。だが熱燗おれの分も頼む。」
「はは、りょうかーい。」
鼻を擽るワインの香りを残してヒラヒラと手を振りながら洗面所を去るゆず。
風呂上がりの酒を楽しみに、いつもより少し早めに風呂を出た。
雪景色には熱燗で。
いつもと同じ日常も、雪が降ってるだけで世界が変わる。
真っ白な一面を見ながらの酒は、思った以上に美味かった。
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