平和に乾杯。 | ナノ







世間一般に見ても麦わら海賊団ってのは美男美女揃いだ。
そのなかで特に誰がタイプだとかそういった感情は持ち合わせていないけど。しいて言うならみんなかっこよくて好きだ。


「じゃあどんな人と付き合ってたの?どうやって男選びしてるの?」


男選びって。その言い方!…もうちょっと違う聞き方があるでしょ。
ナミにニヤニヤされながら、そんなことを聞かれる今夜の宴。今日は久しぶりにスロット回してきたから勝って浮いたお金で酒盛りしてる。8割はナミのポケットマネーだということは誰も知らない。真実は闇の中。


「………んー、」


聞き方がやけに生々しいけどそれはさておき男選び、つまりは彼氏にするならどんな人かということですね。
過去に付き合ってた人かー。ぶっちゃけ今まで付き合った人たちには、そこまで思い入れがなかったりする。
真実の愛?本気で好きってどういうこと?うーん難しい。


「今まで、好きだって言われて、何となく付き合って…って感じだったからなー。」


ワイングラスを揺すって回る中味を伏し目がちに見ることで、ちょっぴり小悪魔チックな大人の女をセルフプロデュース。イタイ。
そもそも疑似レンアイを売りにした業界で働いていたからね。好きだの愛してるだの甘いことばはどうしても薄っぺらく見えてしまう職業病。
裏の裏の裏を斯く、そしてたまに表も見せる、それが駆け引きってやつなのです。


「やっぱりモテるのね。」

「いや、それがねー。付き合った人全員にフラれちゃうからそうでもないんだよー。」


同じようにワイングラスを傾けるロビンはやっぱり色っぽい。それだけで絵になるんだよね。羨ましい。

あたしの外見はどうも子供っぽいらしい。中身を知ると、子供っぽくは見えなくなるとは言われたけど。第一印象だけで言うとルフィよりも年下に見えるんだってさ。ああ、不憫なあたし。


「元カレたち曰く、見た目と中身の違いが激しすぎて裏切られたように感じるんだって。」


やばい思い出したら少しブルー。特に思い入れがないとは言えそんなことを仮にも彼氏に言われたら少なからずショックを受ける。
何がいけなかったのかなー?

喫煙席しか空いてないけど大丈夫?→いやあたし喫煙者だし。…あ、タバコ吸うんだ。
ホテルのディナー予約したから行こうか→居酒屋のが好きなんだよね。…へぇ、意外。
何呑む?カクテル?→生ビール。大ジョッキで。…お酒好きなんだ?
遊園地行こう→それより乗り打ちしない?新台導入だよ?


なんか………ゆずちゃんって思ってたイメージと違うんだね…。


何度言われたことだろう。確かにさ、仕事中はタバコも吸わないしお酒も高い可愛いカクテルばっかだったけどさ。ひどくない?


「ああ……それは、確かに。」


回想終了。下から上へと見られて苦笑いながら納得された。ひどいよー。
はあ、お酒の席でだとはいえ、自分の過去の恋愛話って慣れなくて恥ずかしい。


「で?どんなのがいいんだよ結局。」


話題を振り出しに戻してくれたのは、意外にも興味深げに聞いていたウソップだった。

そうだなぁ、と大して考えもせずに、ポーズだけはそれっぽく取って。
酔っ払ってニヤニヤしているウソップと、会話の流れをイマイチ理解しきれてないチョッパーが答えを待っているのを目に捉えた。

ふと、周りに耳を傾けるとあれだけ騒いでいたみんなが静まっていて。もしや全員があたしの答え待ち?なにそれやだ。変に緊張するんだけど。


「………第一条件は、……あたしを満足させてくれるかどうか、だよねー。もちろん、色んな意味で、ね。」


そう言うとナミは呆れてロビンは微笑んで(同意してくれたのか?)ウソップは顔を赤くしてひゅーって叫んだ。

この会話を盗み聞こうとしている男衆には、ニヤリと挑発するような笑みをお見舞いしておきます。


「フフ、あなたはほんとに悪い女ね。」

「えー?ナミには負けるけど。」

「ちょっと何でわたしが出てくるのよ。」


こういう冗談は女子には通じるんだけどね。お耳ダンボにしていた男衆には通じたかな。……ま、どっちでもいいや。










悪い女、悪いノリ。


(おまえ…そんな選び方してたらろくなことねぇぞ。)

(はいはーい!ゆずちゅわん!おれ自信あるし今夜一緒に過ごさないかい!?)

(んなっ……!てめぇアホコックゆずに近付くな!)

(うるせー、おれはなぁ、ゆずちゃんにいい男だって知ってもらうんだよ!邪魔すんな!)

(あぁ?!エロコックふざけんな!)


(うるさーい!!)

ナミの攻撃!げんこつ!効果は抜群だ!

(二人とも何言ってんの?あんなのゆずの悪い冗談に決まってるじゃない!ゆず!あんたも!挑発しないの!)

(……はーい。)

((………え、冗談だったの?))




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