サンジの淹れてくれたいい香りのコーヒーに気持ちを落ち着かせた所でキッチンのドアが開いた。
バン、と少し勢いよく音を鳴らしたのは意外にも航海士のナミだった。可愛い顔が少し強張ってるのは勘違いではなさそうだ。
「んナミすわんおはよう!」
「あ、おはよー、」
眉間に寄ったシワが呑気に挨拶をしている余裕もなさそうなのを物語っていて。
それでもナミは律儀に挨拶を返してくれたけど、すぐに目線をサンジに向けた。
「おはよう。サンジくん、男性陣起こしてきてくれる?ちょっと海がおかしくて…、何かあるかもしれないの。」
ため息を吐きながらそう指示した。
「!了解、ナミさん!」
いつの間にかナミにもコーヒーを淹れていて、サンジはすぐに男部屋に走って行った。
……こういう時。
まだ、場馴れしていないあたしは何となく疎外感を覚えたりする。
船の上で生活したことなんておろか、船に乗る機会さえも滅多にない生活を送ってきたあたしに何かを率先して頼むなんてことはまずあり得ない。
せいぜい足手まといにならないように隅っこに小さくなっているか、たまにロープを片付けたりするくらい。
「いきなり何で島が現れたのかしら…、しかも海も穏やかだったり所々渦巻いていたり…、」
ナミは頭を抱えて独り言のように呟いていた。
机に海図を広げて、コンパスで線を引くナミの様子をジッと見つめた。普段からしっかりしているけれど、こういった場面では更にしっかりして。ビシリと的確に指示を出す彼女の真剣な眼差しは憧れにも似た感情をもたらせた。
「……おはよう、フフ、朝からドタバタでびっくりしたでしょう?」
ふいに、肩に温もりが落ちた。
ナミとは反対に、ゆったりとした動きでキッチンに来たロビンのもので。大人の余裕というものをいつも見せつけられる。穏やかな笑みに朝から安心させられて、この一連の流れによってざわめいたあたしの心を落ち着かせた。
「ロビン!おはよう、……うん、ちょっとびっくり、というか正直頭もついていけないかなぁ。」
「フフ…最初はそうよね…、」
正直な気持ちを口に出すと、またいくらか楽になって。船で生活しだしてまだ何日と経ってないんだものね、と優しくロビンは言ってくれた。
お互いに微笑み合わせて穏やかな空気に包まれたのは一瞬のこと。
すぐにドタバタと騒がしい足音が近づく。
「メーーーシーーー!!」
バーン!とキッチンのドアがそれこそ乱暴に開けられた。今日も今日とて元気いっぱいなルフィの声が船上に鳴り響いて1日が幕開けた。
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